キセキあの日のソビト

2022年06月20日

先週は5本、絶対観て欲しい「君を想い、バスに乗る」、感動の「キーパー」、骨太西部劇「荒野の誓い」、実話?「キセキ あの日のソビト」、そして「はい、泳げません」は?

〇(スクリーンで鑑賞)「君を想い、バスに乗る」
(★★★★★)(2021年英国)(原題:HIGH BROW CINEMA)
亡き妻との約束を果たすためにバス旅に出た老人、至高の人間ドラマ

06バスに乗る

長年連れ添った妻メアリーに先立たれたトムは、スコットランド北端の町からイングランド南端の町ランズエンドを目指すバス旅に出る、敬老無料パスで何本もバスを乗り継ぎ、様々な人たちと出会い、たくさんの危機に遭遇するが、トムは強い信念と優しい心根で旅を続ける、、、



頑固ながらも正義漢に溢れるトム、トラブルの連続ながら決して旅の完遂を諦めない、理不尽な扱いを受けても、優しく微笑み、そして正義を貫く、原題の『HIGH BROW CINEMA』は『高貴な老人の物語』というところでしょうか?まさしく、ラストは高貴な老人への讃辞で溢れます、泣きました、

単なるロードムービーではなく、巧妙な映画的レトリックが2つ仕掛けられていて、これも成功しています、1つ目はみなさんすぐに気付くかもしれませんが、ワタシは勘違いして観ていました、2つ目はとくに巧妙でみなさん欺されたのではないでしょうか?

ぜひ観るべき映画です、強くお奨めします、

邦題付けるのが難しい映画、でも原題ではたしかになんのこっちゃ?ということになりますな、


◆(自宅で鑑賞)「キーパー」
(★★★★☆)(2018年英国・ドイツ合作)(原題:The Keeper)
捕虜になったドイツ兵士、サッカーのキーパーとしての才能を発揮する実話

06キーパー

第2次世界大戦、バートは捕虜収容所でキーパーとしての才能を見出され、労働奉仕の代わりに地元サッカーチームへの参加を求められる、バートの活躍でチームは優勝、功績が認められプレミアムリーグのマンチェスター・シティへ移籍することに、しかし、元ナチス兵のバートへの反感が高まり、ブーイングの嵐が、、、



英国の国民的英雄となったバート・トラウトマンの実話を基に描かれています、終戦直後の英国、多大な犠牲を払った英国民のナチスドイツへの憎悪はいかばかりか、しかし、物語はナチスへの怒りに留まらず、バートとその妻を襲う悲劇に展開、なんともやり場のない悲しみに包まれます、

夫を信じた英国人の妻、ユダヤ人ラビ、地元チームの監督、マン・シティの監督、悲惨な2次大戦の精算と人としての尊厳を守った人々が描かれます、そう、しっかり精算することが大切、この映画を英国とドイツが合作で作っているところにも大きな価値あり、

妻役のフレイア・メーバーが良い、お奨めです


◆(自宅で鑑賞)「荒野の誓い」
(★★★★☆)(2017年米国)(原題:Hostiles)
19世紀末、近代化する米国、ネイティブアメリカンと米国兵士との物語

06荒野の掟

1892年、産業革命で急速に近代化するアメリカ西部、インディアンを収容するニューメキシコの砦、死期が近い酋長イエローホークを生まれ故郷に護送することになったジョー、かつてこの2人は西部開拓の最中に闘った仲、途中でコマンチ族の襲撃で家族を失ったロザリーも加わり旅は続くが、一人また一人と命を落としていく、そして最後の敵は意外にも、、、



20世紀間近の英国、西部開拓時代は終わりを告げ新しい時代を迎えようとしている時、新天地開拓のために闘ってきた兵士とネイティブアメリカン、ステレオタイプの西部劇ではありません、ネイティブアメリカンの土地を奪い迫害してきた米国移民文化のほころびのスタート地点とも思える時代背景の中での友情物語、徐々に心を開いていくジョーが見た結末は悲しくも尊厳があります、

骨太の演出で観応えありました、最後の決闘は「ウインド リバー」のような展開、

ロザムンド・パイクは、やはりここでも強かったです^^)


(★★★★☆)(2017年日本)
人気グループ「Greeeen」のヒット曲「キセキ」の誕生秘話

06キセキ

医者である厳格な父親の元で育てられたJINとHIDEの兄弟、JINはロックバンドでメジャーデビューを果たし家を飛び出す、HIDEは父親の期待に応えようと歯科大に進学、HIDEもまた仲間とグループを結成、音楽を楽しむ兄弟だが父親は音楽の価値を1ミリも認めない、そんな時、JINとHIDEに意外な化学反応が起こる、、、



未だに顔を見せない歯科医師4人グループ「Greeeen」のヒット曲「キセキ」の誕生秘話、ということのようです、実話なのか?しかし、厳格な父親小林薫がとっても怖くて堅物です、日本刀を振りますような父親、相当脚色されているように思えますが、

今をときめく松坂桃李と菅田将暉兄弟、こりゃすごいですね、そして劇中では喝采の歌唱シーンも披露しています、なかなかのモンでした、実話でなくても音楽映画として十分に楽しめるクオリティです、

副題の「ソビト」については調べたらすぐに分りますので、そちらにお任せします、


〇(スクリーンで鑑賞)「はい、泳げません」
(★★?☆☆)(2022年日本)
泳げない哲学者、元妻、恋人、そして水泳のコーチ、それぞれが抱えるトラウマ

06はい泳げません

大学で哲学を教える小鳥遊(たかなし)、実は水が怖くて泳ぐことが出来ないのに、ふと見つけたポスターに導かれてうっかり水泳教室に入ってしまう、水への恐怖心からプールに入ることも出来なかった小鳥遊だが、コーチの静香の指導で徐々に泳げるようになっていく、が、小鳥遊が泳げないのには訳があった、、、



冒頭快調、小鳥遊と静香コーチの軽妙なやりとりは結構笑えます、、、が、、、後半は一転、小鳥遊の過去のトラウマ、元妻との奇妙な関係、子連れの恋人、そしてこちらもトラウマを抱える静香、と物語の足取りは急に重くなります、

さて、残念ながらスッキリしない観後感、この映画のストレスは何処にあるのか?軽妙なコメディ+ちょっと泣かせる物語として最後まで撮り切ることも出来たかもしれないのに、妙なところに迷い込んでしまった感あり、

しかし、一番映画的にストレスなのは小鳥遊を巡る女性3人元妻、恋人、水泳コーチが全員善人であることかな、全員善人では物語にはならないよ、そしてキャスト的には長谷川・綾瀬の物語があるのかと思いきや、そうでもない、さらっと水に流されていく綾瀬はるかが不憫です、ここが一番モヤモヤしたかな、普通に長谷川と綾瀬の恋が芽生えるのが映画的だと思ってしまうのは俗物の邪心^^)

タイトルやキャスティングから、勝手に期待して観てはイケない映画もあります、





syougai1pon at 05:30|PermalinkComments(0)