映画

2025年06月16日

先週も3本、「国宝」「ソウルの春」「ぶぶ漬けどうどす」

〇(スクリーンで鑑賞)「国宝」
(★★★★☆)(2025年日本)
血筋と芸がぶつかり合う、歌舞伎役者2人の半生記

06国宝

上方歌舞伎の看板役者花井半次郎、やくざの抗争で父親を失った喜久雄の才能を見抜き、家付きの弟子にする、半次郎の息子俊介は面白くないが、同い年の2人はすぐに気投合、2人で芸の道を究めるために精進を重ねていく、半次郎が事故で入院、半次郎は公演中の舞台の代役に息子の俊介ではなく喜久雄を指名、猛反対する母親、喜久雄は圧倒的な芸で舞台を務め揚げるが、それを観た秀介は自らの非力を悟り出奔してしまう、ここから2人の数奇な運命が始まる・・・



歌舞伎の世界に生きる父と母、息子、そして背中に刺青を背負った芸の達人とその恋人、この5人の50年にわたる波乱万丈の人生を描く大河ドラマ、描き切るのに175分は致し方なしか、

前半のハイライトは我が息子を差し置いて、喜久雄を代役に指名した半次郎の芸への執念、俊介もその真意を悟り、喜久雄の恋人春江は俊介を気遣い2人で姿を消します、ここで終わっても1本の作品になりそうですが、ここからが波乱万丈、二転三転、歌舞伎という芸の魔力がそれぞれの人生を翻弄します、さすがに後半は少し緩む時間帯もありますが、終着点への展開には息が詰まりました、

この映画の功績として、相当完成度の高い歌舞伎の舞台を鑑賞できる、いや垣間見る、くらいかもしれませんが、代表的な歌舞伎作品の舞台をダイジェストで鑑賞できることでしょう、若いお客さんも、普段歌舞伎を観ないお客さん(ワタシもそうです^^)もスクリーンの歌舞伎シーンには見惚れたのではないでしょうか、そして「曽根崎心中」の重要な件が俊介と喜久雄の運命にも上手に絡んで来たのには感心しました、原作者の放った見事なレトリックなんでしょう、ぜひ鑑賞してください、


◆(自宅で鑑賞)「ソウルの春」
(★★★★☆)(2024年韓国)(英題:12.12: The Day)
実際に韓国で起こった軍事クーデターの一夜の攻防を描いたサスペンス

06ソウルの春

1979年10月、長年絶対権力者として君臨してきたパク・チョンヒ大統領が暗殺される、国民は独裁が終わり民主化が進む「ソウルの春」を期待するが、混乱に乗じて軍事クーデターを企てるドゥグアン司令官は強硬派「ハナ会」メンバーを次々と招集し、自らに権限を与えるよう後継臨時大統領に迫る、一方、高潔な軍人として人望の厚いイ・テシン少将はクーデター計画を知りソウル防衛の先頭に立つ、先にソウルを制圧したものが政権を握ることが出来る状況、軍事クーデターは成功するのか?それとも民主化が護られるのか?



実際に起こった事件をフィクションを交えながら描いています、実際の一夜、9時間程の物語です、韓国軍同士が戦うという最悪のシナリオに向けて、クーデター派と民主派があの手この手で暗躍・説得・恫喝・偽装を繰り返します、間に挟まれた軍高官や背広組大臣などは的確な判断が出来ず、クーデター派が優勢になって行きます、追い詰められたイ少将はわずかな手勢で反乱軍に立ち向かいますが・・・

フィクションなら、ここで奇跡の大逆転の一手が決まるところですが、現実はそうは行きません、結局軍事クーデターは成功、軍事政権が樹立、民主派のイ少将は反逆者となってしまいます、そして翌年、民主化弾圧事件として名高い『光州事件』が起こってしまいます、多数の市民が軍によって殺害された事件です、

本作は韓国で2023年度観客動員数第1位、韓国の暗黒歴史を描いた映画ですが、暗部こそしっかりと光を当てないといけない、という韓国映画界の矜持も感じます、


〇(スクリーンで鑑賞)「ぶぶ漬けどうどす」
(★★!☆☆)(2025年日本)
東京から京都の夫の実家にやって来た女性が巻き起こすトンチンカンな騒動

06ぶぶ漬け

漫画家のまどか、夫の実家は京都で老舗扇舗を営んでいる、京都の老舗の内側を漫画にしようと実家にやって来たのだ、父親と母親はまどかを歓迎、跡継ぎの女将になってくれることを期待する、京都洛中の生活ぶりを取材するまどか、母親に紹介された老舗女将の寄り合いに顔を出すが、どうも会話がかみ合わない、ある日、扇舗にTVの取材クルーがやって来る、まどかは店の役に立ちたいという想いから勝手に出演し、京都の老舗について語り始めるのだが・・・



タイトル通り、京都洛中の人間模様を描き出そう、京都人の考え方と生活ぶりをあぶりだそうという企画、軽快なコメディかな?と思って鑑賞したのですが・・・???いったい、何がテーマだったのかわっぱり分からない1本でした、京都人としては誠に残念、

京都人の意地悪さとかを際立たせるためなのか?まどかはまったく空気が読めないサイテーの女性でした、女将に内緒で店の取材を許可してひと悶着起こすと、逆恨みで老舗女将連と衝突、さらに不動産会社社長と対立すると漫画に描いてこき下ろし、果てはわたしが女将になって老舗を守ります・・・とな、こりゃ京都人でなくても怒りますわ^^)

メインキャストでは松尾貴史さん以外の出演者の関西弁・京都弁も今一つ、室井さんの出だしは良かったのですが、途中は何度か???のアクセントが、老舗女将が訛ってしまうと物語が色褪せてしまいます、

赤飯の配達、夫の浮気、アシスタントの裏切り、謎の美大教授?漫画での誹謗など、枝葉のエピソードもなにやら下世話な展開、、、観後感も良くありません、

う~ん、うちらが思うに、京都の事ぜんぜん分かったあらへん、いかにも京都洛中には向かへん展開やと思います、はい、みなさん、そろそろぶぶ漬けどうどすか?




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2025年06月09日

先週は3本、「レッド・ベリー」「ゴッドマザー」「雪の花」

(★★★!☆)(2021年米国)(原題:Lead Belly: Life, Legend, Legacy)
12弦ギター奏者でフォークシンガーのレッド・ベリーのドキュメンタリーフィルム

06レッドベリー

米国のフォークソング隆盛期の1940年代、華麗な12弦ギター演奏と独特の歌唱スタイルで後世のミュージシャンに多大な影響を与えたレッド・ベリーのドキュメンタリーフィルム、ピート・シーガー、ジョーン・バエズ、ハリー・ベラフォンテ、B・B・キングなどが語るレッド・ベリーの音楽♬



みんなが声を揃えてレッド・ベリーのギターと歌唱を褒め讃えています、それほどインパクトのあった歌手のようですが、生前にその評価は伴わず、2度も服役するなど不遇の生涯だったようです、そのレッド・ベリーの音楽の真髄に迫るドキュメンタリー、という具合のフィルムです、

副題の“ビートルズとボブ・ディランの原点”というのは日本の配給会社が捻り出した、毎度お馴染み商業ベースのオマケ副題、フィルムの中ではビートルズもディランもほとんど触れられていません、でも影響を与えたのは事実、フィルム冒頭で「レッド・ベリーがいなかったら、ビートルズもなかった」というジョージ・ハリソンの言葉が引用されています、

フィルム終盤に『おやすみアイリーン』がフューチャーされます、最近、ハーモニカ奏者の松田アリ幸一さんの歌唱を2度ほど聴いた名曲、そのルーツがレッド・ベリーだと初めて知りました、ブレイクしたのは彼の死後、「ウィバーズ」が発表し大ブレイクしたからだそうです、この話も初めて知りました、

偉大なる者、死してその真価を発揮する、


(★★★!☆)(2025年日本)
ファッションデザイナーのコシノ3姉妹を育て上げたコシノアヤコの生涯

06ゴッドマザー

危篤状態に陥ったコシノアヤコの枕もとにヒロコ・ジュンコ・ミチコの3姉妹が集まる、アヤコの前には天使が現れ、アヤコを天国に送るべきか地獄に送るべきか、審判を始めるという、病室に泊まり込んだ3姉妹は母アヤコの波乱万丈の生涯を思い出しながら一夜を過ごす、



NHK朝ドラでもお馴染み、大阪岸和田で洋装店を営み、3人の娘を世界的ファッションデザイナーに育て上げたコシノアヤコの一生を描きます、少女の頃にミシンと出会い、ミシンに恋焦がれる、女学校を辞めて縫いもの屋に就職し、ひたすらミシンを踏み続けるアヤコ、戦時中の苦難も生まれながらのバイタリティで乗り越えます、それを観ていた3人の娘はそれぞれのやり方でデザイナーへの道を歩みます、

性格の違う3姉妹になにも強制せず、やりたい事だけをやらせて、そして3人ともが一流になるという奇跡のような物語です、なるほど、やはり『この母ありて・・・』という事なのでしょう、

60歳を超えてから自らのブランドを立ち上げたアヤコ、その作品は娘たちのデザインに酷似、娘たちがクレームを入れる、
『これ、ワタシらの作品にそっくりやん!!』
『そらそうや、パクってるんやから^^、アンタらを生んだんはワタシや、アンタらの作品はワタシのもんや!!』

こんなお母さんだったようです^^)なかなかのゴッドマザーぶりに拍手、

大地真央好演、さすがに娘時代は無理がありますが^^)それも一応ギャグで治まりをつけています、

正しき心は強い心を生む、観て損はなし、

(★★★☆☆)(2024年日本)
天然痘で苦しむ庶民を救いたい一心で「種痘」普及に一生を捧げる町医者の物語

640

江戸時代末期、日本国内では天然痘が流行、有効な治療法がないために死者が続出、なんとか天然痘を治療したいと考えた福井の町医者・笠原良策、蘭方医から西洋医学の治療法である天然痘の予防接種「種痘」の存在を知る、京の蘭方医日野の元で種痘について学び、福井でも予防接種をおこなうために藩主に「種痘」の必要性を上申するのだが・・・



笠原良策は実在の医者だそうです、天然痘に苦しみ庶民を何とか救おうともがく良策、西洋医学を学び予防接種の有効性を確信、藩主の後押しもあり、私財を投げ出して「種痘の苗」=天然痘に感染した牛のかさぶたを入手することにします、苦難の末、その苗を無事福井に持ち帰るのですが、牛の病気に感染するとの噂が広まり、だれも種痘を受けようとしません、、、

はじめて国内で「種痘」を行うのは大変なハードルがたくさんあったでしょうが、良策は恵まれていました、協力的な蘭方医とその家族、もの分かりの良い藩主、苗はすぐさま長崎から届くし、種痘の普及を阻もうとする藩官僚もすぐに駆逐される、嫌がらせをするやくざを柔術で撃退する良策(こんなに強かったんだ!?^^)と、なにやら物語はスイスイ進みます、最大の困難は子供に移植した種痘の苗を運ぶための雪の中の峠越えという、本題とは違うサスペンスとは・・・

もっとあったであろう種痘への無理解、庶民の不安、普及を阻む奉行所や漢方医との暗闘、藩主説得の困難など、ストレスフルな物語があったのではないかと思うのですが、何とも綺麗過ぎる美談になってしまったような気分、ちょっと残念、

名を求めず、利を求めず、見事な心意気でした、芳根京子好演、




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2025年06月02日

今週は5本、「ミッションインポッシブル2025」「父と僕の終わらない歌」「ベッキー、キレる」「スンブ」「無法松の一生」

(★★★!☆)(2025年米国)(原題:Mission: Impossible - The Final Reckoning)
お馴染みシリーズ最新作、地球上の核兵器を支配しようとするAIに立ち向かうイーサン

05MIP

世界はAIの独自進化で破滅の危機を迎えていた、イーサンは米国大統領に直訴、世界を救えるのは自分だけだと断言、米海軍の協力を得て、暴走AIを食い止める“鍵”が眠る北極海に沈むロシア潜水艦に乗り込む、AIを支配しようと企む宿敵や、イーサンに批判的な官僚、CIAなどが入り乱れての“鍵”争奪戦になり、イーサンの計画も破綻寸前、世界の滅亡まであと数分、大統領は核ミサイル発射の決断を迫られるが…



お馴染み、トム・クルーズのスタントが話題の作品、たしかに今回もアナログ飛行機でのアクションシーンは観ていてハラハラドキドキ、どのように撮影しているのか?ホントに良く出来たアクションシーンです、

今回が最終作、という訳でもなさそうですが、一応、これまでのシリーズの名シーンが再登場、過去の登場人物もそろい踏みで、集大成的な物語になっています、が、物語自体は最近たくさん作られているAIの暴走による世界破滅の危機という新味のない物語、やはりこの作品はトム・クルーズの体当たりアクションシーンがお値打ちということになりそうです、

169分は少々長すぎました、ま、サブスクで自宅でゆっくり鑑賞でも問題ないと思います、


〇(スクリーンで鑑賞)「父と僕と終わらない歌」
(★★★!☆)(2025年日本)
歌手への夢を捨てきれない父親が認知症に、妻や息子、仲間たちが必死に支えようとします

05父と僕の

横須賀で楽器店を営む間宮、洒落たファッションでアメ車を乗り回すイケてるオヤジ、が、ある日自分の家の場所が分からなくなる、初期の認知症と診断された間宮だが妻と2人で協力しながら楽しく生きていくと、いたって呑気に構える、息子の雄太はそんな前向きな両親を観てあっけにとられる、しかし、間宮の病状は一気に悪化、そんな時、昔に録音した間宮の歌のカセットテープが出て来る、歌を歌っている時の間宮を観て雄太はあることを思いつく…



実話をもとにして英国映画のリメイク作品だそうです、イケてるオヤジを寺尾聡が好演、彼の歌声無しには、この映画は完成しなかっただろう、と思わせます、劇中での寺尾の歌唱シーンはなかなか観応え聴き応えがありました、

息子の雄太が撮った間宮の歌唱動画がSNSでバズりますが、思わぬ落とし穴もあります、それでも間宮の最後のステージを設えた雄太、間宮の病状は進行しており、すでにステージに立つ力は残っていないのですが…

横須賀の街も、間宮のファッションも、唄も良いのに、どうもフィナーレが中途半端な印象でした、もっと寺尾聡の歌が聴きたかったかな、でもまあ良作、観て損はなし、


◆(自宅で鑑賞)「ベッキー、キレる」
(★★★!☆)(2023年米国)(原題:The Wrath of Becky)
天涯孤独の少女ベッキー、世話になっている女性が殺されたことからベッキー復讐が始まる

05ベッキーキレる

事件により両親を失ったベッキー、唯一の理解者エレーナと静かに暮らしていたが、ある日、極右集団の3人組がエレーナの家に押し入り、はずみでエレーナは殺されてしまい、愛犬も奪われてしまう、愛犬奪還と復讐を誓ったベッキーは持っている戦闘能力全開で極右集団のアジトに向かう…



よくある米国田舎町に潜む狂気みたいなものがベースです、里親から逃げ回ってやっと見つけたエレーナとの生活、慕っていたエレーナを殺され、愛犬も奪われたことで、ベッキーはブチ切れます、極右集団のアジトで武器を入手、周到な計画でひとり、またひとりと倒していきます、

シリーズ2作目のようですが、1作目は鑑賞していません、それでも充分楽しめます、B級ですが筋立てがシンプルでテンポが良い、それに84分と小品、休日ののんびり鑑賞にはピッタリ、案外楽しめますよ、


(★★★!☆)(2025年韓国)(英題:The Match)
韓国囲碁界最強棋士と、彼が見込んで弟子に取った天才少年との戦い

05スンブ

韓国のトップ棋士チョ、世界囲碁選手権で優勝し国民的英雄になる、ある日の公開対戦で10歳の少年イと出会う、イに無限の可能性を感じたチョはイを弟子にし、自宅に住まわせ2人で囲碁の真髄に迫ろうとする、メキメキ上達したイはついにタイトル戦決勝で師匠のチョと対戦するまでに成長するが…



囲碁映画です、タイトルを総なめにして絶頂期を迎えるチョ、周囲の反発も相当なものがあります、しかし弟子のイの成長は想像以上、いつしか師弟間の溝も深まって行きます、そしてついにイが師匠を破ってタイトルを獲得すると、チョの凋落を書き立てるマスコミ、2人の関係は壊れてしまったように見えますが、ラストは碁への敬意をはらう2人の高潔な気持ちが勝ります、

チョは攻撃的、イは守備的な碁を打ちます、師匠は弟子に攻撃を勧め、弟子はそれを受け入れない、この辺りのお互いの意地のぶつかり合いも(碁を知っていると)面白いです、

こういう専門性の高いジャンルの映画は、その忠実な碁盤上の再現性が求められると思うのですが、どうしても完璧には行かないようです、碁を知っている者からすると不自然な石の運びや、カット繋がりでの間違いなどがありました、でも囲碁好きなら観ては如何でしょうか?


◆(自宅で鑑賞)「無法松の一生」(1958年版)
(★★★★☆)(1958年日本)
北九州の人力車夫、松五郎の一本気な生涯を描く人情物語

05無法松

明治30年(1897年)の北九州小倉、人力車夫の松五郎は一本気であらっぽい型破りな性格、あれこれと騒ぎを起こすが、根はまっとうで優しい男、ある日、足を怪我した少年を家まで送り届ける、母良子からの礼金も受け取らず姿を消す松五郎、父の陸軍大尉吉岡はその話に感心し、松五郎を探し出し家に招く、意気投合する2人、それをきっかけに松五郎は吉岡家に「出入りするようになるが…



明治30年、日露戦争に勝利し湧きかえっている時代、あらっぽい性格の松五郎だが少年にはとても優しい、吉岡大尉が急死したことから、良子に頼られ、松五郎はあれこれと吉岡家を陰で支えることになる、いつしか松五郎は良子に淡い恋心を抱くようになるが、そんな邪な気持ちを持つ自分が許せない松五郎の心の動きが切ないです、まっすぐに生きて来た男の生涯を見届ける物語です、

「無法松の一生」は1943年(昭和18年)にオリジナル1作目が制作されましたが、第2次世界大戦中のため軍の検閲などで完全な形での上映が出来なかったようです、本作はその無念を晴らすために作られた2作目リメイクです、ここでも一本気な映画屋の心意気が見えます、三船敏郎と高峰峰子は必見、ぜひ鑑賞してください、




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2025年05月26日

今週はとても良い対照的な2本、「かくかくしかじか」「金子差入店」

〇(スクリーンで鑑賞)「かくかくしかじか」
(★★★★☆)(2025年日本)
漫画家を目指す少女が出会ったのはスパルタ式絵画教師!?上質のハートフルコメディ

05かくかくしかじか

宮崎で暮らす明子、画が得意で漫画家になるのが夢だが、何の努力もしていないグータラな面もある、美大進学を目指し画を習いに行くと、そこにいたのは竹刀片手の絵画教師日高、型破りな日高の指導方、“へたくそ!”と罵られた明子はすぐに辞めるつもりだったが、日高の意外な面も見せつけられ通い続けることに、明子と日高の長い師弟物語が始まる・・・



ちょっとお調子者の明子、画が上手いことを両親に褒められて浮かれる明子の鼻を日高が見事にへし折ります、上には上がある、延々とひたすら石膏デッサンを描かされ半泣きの明子、美大の筆記試験もなんとかクリアして美大生になると、画を描かずに大学生活を謳歌、するとスランプに陥り全く画が書けなくなりますが、ここでも日高が明子を画と向き合わせます、描け!描け!描け!ひたすら描くことを強要する日高、少しずつ2人の信頼関係は醸成されていきますが、ホントは漫画家になりたいと言い出せない明子、

『東京タラレバ娘』などの人気漫画家・東村アキコさんの自伝的漫画が原作、ほとんどホントの話ではないかと思える展開が楽しいし、宮崎の原風景的な映像も良い、適当に調子よく荒波を乗り越えていく逞しい明子、一途に画の道を突き詰めている日高、2人の師弟関係は明子が漫画家への夢を吐露したことで距離を置くことになりますが、それでも日高は明子へたっぷりの愛情を注ぎ続けます、

永野芽郁は上手ですね、大泉洋はアタリ役、これまでで一番の適役ではないでしょうか?原作者の東村さんが映画化するなら日高役は大泉さんでやりたいとおっしゃっていたそうです、劇中同様アキコの感性は間違いなかった!!とても良い映画です、ぜひ鑑賞してください、


〇(スクリーンで鑑賞)「金子差入店」
(★★★★☆)(2025年日本)
受刑者への差し入れを代行する“差入屋”が思わぬトラブルに巻き込まれる、ヒューマンドラマ、

05金子差入店

傷害事件で服役した過去がある金子、刑務所近くで受刑者への差し入れを代行する“差入屋”を営んでいる、妻と小学生の長男、ささやかな幸せがそこにあるのだが、長男の同級生の女の子が通り魔に襲われ死んでしまったことから、その商売柄から一家に厄災が降りて来る、妻はママ友からの嫌がらせを耐え忍んでいたが、長男が学校でイジメられていることを知り激怒した金子は、職員室で担任の先生に暴力をふるってしまう、そんな時、刑務所の面会申込に来ている女子高生・佐知と知り合う、佐知は自分の母親を殺した殺人犯への面会を望んでいた、、、



こちらはずっしり重いヒューマンドラマです、前科のある金子、金子を支える妻と叔父、皆善人なのですが、差入屋は周囲の眼には奇異に映るようです、通り魔の母親が差し入れ代行を依頼しますが、この母親も病んでおり、やっかいな状況に陥ります、学校で暴力をふるったことで自己嫌悪に陥る金子ですが、殺人犯との面会を望む佐知と向き合う事で、差入屋という自分の仕事の意味を悟ります、

金子一家がダークサイドに落ちそうな不安定な状況がずっと続き、観ていてハラハラ、それでも踏みとどまる事の意味を見出してくれた金子に拍手です、

差入屋ってホントにあるのでしょうか?ま、利用せずに済むのが一番ですが、、、監督の初監督作品・オリジナル脚本だそうです、素晴らしい才能が開花しましたね、タイトルからはイメージしにくい雰囲気の物語ですが、良いヒューマンドラマです、こちらも鑑賞お勧めします、


バタバタして、先週は2本しか観れなかった、今週は頑張ります!!^^)







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2025年05月19日

先週は3本、「リー・ミラー」「花まんま」「駅Station」

(★★★★☆)(2023年英国)(原題:Lee)
奔放な生活を楽しんでいた主人公が戦場カメラマンに転身、ナチスとの戦いの前線へ赴く

05リーミラー

第2次世界大戦線前夜の1938年、南仏で仲間たちと奔放なあ生活を楽しむトップモデルだったリー、そこで出会った芸術家ローランドと恋におち、英国で暮らすようになる、写真を撮るのが得意だったリーはヴォーグ誌のカメラマンとしての職を得る、ナチスドイツによる侵攻が始まり、リーは戦争の実態を報道すべきという信念の元、戦場カメラマンに志願するが英国は女性カメラマンを前線に送らない、リーは一計を案じ前線を目指す、、、



リーは実在の戦場カメラマン、数々の戦場写真を撮影、ヒトラーの自宅浴室を撮影したことでも有名だそうです、知りませんでした、昨年公開された女性戦場カメラマンが主人公の映画「シビルウォー」でも言及されていたそうです、気付きませんでしたが^^)

物語は戦前の南仏で仲間たちと愉快に暮らすリーから始まります、奔放で気の強いところもあり、一夜で恋に落ち結婚もします、そして撮りためていた写真を雑誌社に持ち込み写真家としてスタートします、モデルから写真家、それだけならありそうな話ですが、戦争がはじまるとリーは戦場カメラマンを目指します、アメリカ国籍だったことが幸いし、開放後のパリへ向かいます、そこで知った悲惨な戦場の実態、周囲の反対も押し切ってリーは最前線のベルリンを目指します、

リーはナチスによる大量虐殺の事実を最初に伝えたうちの一人、カメラマンとして戦場に立つ恐怖と、それを乗り越えて真実を切り取りたいというカメラマン魂、見応えのある1本でした、ぜひ鑑賞してください、

あ、副題は不要です、



〇(スクリーンで鑑賞)「花まんま」
(★★★★☆)(2025年日本)
早くに両親を失った兄妹、妹の結婚を機に奇妙な物語が動き始める、泣ける映画

05花まんま

父親を事故で、そのあと必死に働いた母親も病気で失った俊樹は、兄として妹フミ子を守るという父親との約束を果たすために懸命に働いてきた、そのフミ子が結婚することになる、相手はカラスと会話が出来るという学者肌の太郎、フミ子を思うあまり太郎にきつくあたる俊樹だが、ついに2人の結婚を認める、結婚式の2日前、フミ子は俊樹にウソをついてある家を訪ねる、ウソに気付いた俊樹は、この12年間フミ子が抱えていた秘密に気づいてしまう、、、



フミ子が抱えていた秘密、これがこの物語の太い縦軸ではありますが、そのアイデアを乗り越える数々の映画的レトリックが機能して、とても良い映画に仕上がっています、

フミ子を兄の手ひとつで育て上げてきたことを自慢する俊樹が表の筋立て、とても優等生に見えるフミ子、が、なぜか見ず知らずの家族と談笑しているフミ子もいる、その秘密はなかなか明かされません、ひ弱に見える婚約者の特技が役立つのも面白い、ラストの展開はある程度読めるのですが、それでも大泣きしてしまいました、

ちょっとしたギャグがよく効いています、大阪の下町人情も良し、久しぶりにエエ関西弁をたくさん聞かせてもらいました、オール阪神さん好演(阪神さんは何故かさん付け^^)、ファーストサマーウイカ当たり役、若返ったキムラ緑子にビックリ!!鈴木亮平、お茶目で不器用な兄を好演、何度も笑って大いに泣ける映画です、

大いに泣いてストレス発散して気持ち良く映画館からお帰りください、


◆(自宅で鑑賞)「駅/STATION」
(★★★!☆)(1981年日本)
北海道警刑事の人生を描くヒューマンドラマ、事件の節目で駅に立つ健さん

05駅ステーション

北海道警刑事の三上、射撃の名手でオリンピック出場も決まっている、そんな時、妻と子供と離別、捜査中に上司が目の前で射殺されるなど難事が相次ぐ、10年後、三上は増毛で起こった連続殺人事件の犯人吉松を追っていた、吉松の妹すず子に翻弄されながらも逮捕にこぎつける、さらに人質立てこもり事件も見事に解決する三上だが、警察官としての仕事に限界を感じるようになっていた、久しぶりの里帰りで増毛に戻った三上、そこには運命の出会いが待っていた・・・



「駅」というタイトルから、柔なヒューマンドラマの展開を想像しますが、主人公は寡黙な刑事、事件も次から次へと起こります、主演は高倉健、一線級の相手役ラインナップ(いしだあゆみ・烏丸せつこ・倍賞千恵子)、脇役もオールスターキャストと何とも絶妙なバランスを狙った企画ですが、タイトロープを渡り切ってなんとか成功しています、脚本:倉本聰、

冒頭の妻との別れの原因が終盤で解き明かされるのかと思いきや寸止めで不明のまま、数々の手柄を立てる三上には苦悩がつきまといます、増毛駅前の酒場の女将と心を通わした三上は、警官を辞めて穏やかな生活に入るのか?と思いきや、12年前の上司殺害犯の登場で物語は急展開、と盛りだくさん過ぎるエピソードを上手な脚本でエンディングまで引っ張りました、

なにやら大河ドラマでも観たような気分になる不思議な傑作です、観て損は無し、




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2025年05月12日

GWは8本、うち5本を紹介、「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」「新幹線大爆破(2025)」「サンダーボルツ」「片思い世界」「シンシン」

(★★★!☆)(2025年日本)
冴えない大学生活、そこに現れた彼女、やっと楽しい毎日が訪れたと思いきや・・・

05今日の天気

大学生の小西、友達は地元訛りにこだわる悪友のみ、鬱々とした大学生活を送っている、深夜の銭湯清掃のバイト仲間、年下のさっちゃんにもその性格をいじられる始末、そんなある日、授業で桜田花に一目惚れ、勇気を振り絞って声を掛ける小西、花も小西の誘いに応じ2人で会うようになる、やっと小西にも明るい大学生活が訪れたかと思った矢先、花は小西の前から忽然と姿を消す、、、



小西の生活パターンは昼間の大学キャンパスと、深夜の銭湯でのアルバイト、キャンパスでは花という彼女が出来て浮足立つ小西、そんな小西をバイト仲間のさっちゃんは応援する、という素振りを見せますが、実はさっちゃんも小西の事が好きでした、言い出せない切ない思い、そんな気持ちも知らずに花とのデートを楽しむ小西、さっちゃんはついに小西に気持ちを伝え、その夜を最後にバイトに来なくなります、そして、なぜか同じ日に花も小西の前から姿を消します、

さっちゃんの苗字さえ知らなかった小西を好きになったさっちゃんが愛おしい、そして、小西を袖にしたのか?花の本心はどうだったのか?花に弄ばれたと小西は邪推、そのはずみで唯一の悪友とも喧嘩別れ、と一気にどん底へ落ちた小西に、思わぬ訃報が舞い込みます、

花:河合優実とさっちゃん:伊藤蒼の長台詞シーンがとっても良いです、2人ともこれからが楽しみ、映画的レトリックはよく効いていますが、ちょっとあざとい感もあり、原作はお笑いコンビ「ジャルジャル」の福徳秀介が2020年に発表した恋愛小説、

小西が通うキャンパスは関西大学全面協力のロケ、さっちゃんは同志社大学に通っていました、関西の方はロケ地であれこれ楽しめるかも、


◆(自宅で鑑賞)「新幹線大爆破」
(★★★!☆)(2025年日本)
東北新幹線に爆弾が仕掛けられる、時速100km以下で爆発、止められない暴走新幹線、

05

「新青森」駅発の「はやぶさ」に爆弾を仕掛けたという電話が入る、時速100㎞以下になると爆発する仕組み、貨物列車が同じ仕組みの爆弾で破壊され、事態は一気に深刻化、線路上の列車をすべて排除し「はやぶさ」は東京駅まで時速120㎞走り続けることになる、、、



1975年に同名の映画が作られていますが、今作はその映画へのオマージュです、JR東日本が全面協力、新幹線が爆破されるシーンもあるのによくぞ協力したものです、そのおかげで運行指令室や運転席、車掌の緊張感にリアリティがあって面白かったです、登場人物が多いので、ともすると切り貼りだらけのパート劇に陥りそうな脚本をそれなりに描ききった感はあります、失踪する「はやぶさ」のCGも迫力があります、鉄道ファンには堪らないかも、パニックを起こした乗客の愛憎劇も、あれやこれやと爆発を回避するためのアイデアも面白い、ただ、真犯人と動機の説明がちょっと弱かったかな、

車掌に草彅剛、運行指令に斎藤工、運転手にのん(今回ののんはちょっと物足らない、好きな俳優さんなんですが)、その他乗客もオールスターキャスト、ゴジラ映画のような群像サスペンス劇を楽しんでください、NETFLIXで放送中、


〇(スクリーンで鑑賞)「サンダーボルツ*」
(★★★!☆)(2025年米国)(原題:Thunderbolts*)
CIAから見放されたならず者超人軍団が正義のために一致団結!?

05サンダーボルツ

CIAの裏稼業を引き受けていたエレーナ、長官の命令で秘密倉庫に向かうと、そこにならず者の超人が次々と姿を現す、互いの任務と怨念を晴らすために闘う超人たち、しかし、ここに集められた超人たちは“破棄”される運命だった、議会の不正追及を受けてCIA長官は過去の不法行為の証拠をすべて消し去ろうとしていた、裏稼業を引き受けていた超人たちをまとめて抹殺しようと集められたのだ、超人たちは一時休戦、脱出のために力を合わせることになる、



マーベルコミックのキャラクターをよく知らないのですが、ま、127分が短く感じられたので、エンタメ作品としては合格点なんでしょう、煤けたキャプテンアメリカとか、ロシアの超人父娘、姿を消せるゴーストなど、そのキャラクターを知っていればもっと楽しめるんでしょうね、

物語のキーになるのは超人たちに交じって倉庫に現れたボブ、弱々しい青年なのですが、彼こそがCIA長官が極秘に進めていた超人化計画に組み込まれた最終兵器、能力に目覚めたボブはダークサイドに堕ち、超人たちと闘う事になります、

ダークサイドの話になると、途端に悩み始めるヒーローたちはバットマンの世界観かな、この辺りはいつも???な感じですが、アメリカ人はこんな苦悩する超人が好きなんですね、


〇(スクリーンで鑑賞)「片思い世界」
(★★★!☆)(2025年日本)
ひとつ屋根の下に暮らす3人、楽しく暮らしている彼女たちには秘密があった

05片思い世界

一緒に暮らす美咲、優花、さくらの3人、仲良く夕食を食べ、映画を観て夜を過ごし、昼間はそれぞれ仕事や学校生活を楽しんでいるように見える、美咲は心を寄せる青年に話し掛けることさえできないでいるがそれには理由がある、ある日、優花は母親を見つける、この12年間あっていない母親、優花は母親が働く花屋まで行くが話し掛けることが出来ない、さくらも大学ではだれとも会話が噛み合わない、そんな3人が持っている秘密とは、、、



3人のこの生活がもう12年も続いているという設定、嚙み合わない会話、叫んでも無関心な街の人、無視される3人、あれこれと不自然なシーンはこの映画最大のレトリックへの伏線ですが、案外早くにその謎は明かされます、そこから向かう到達点の説得力がちょっと足らない感じ、

3人の売れっ子俳優をキャスティングすることから始まった作品だそうです、その分、物語自体の熱量不足というか、迫真の気合が感じられない作品となりました、観終わった後になにか残るかと言うと、、、ま、俳優3人の無駄遣いという訳ではなく、なんとかまとまってはいるので観ても大丈夫です、

灯台の近くで、近所のおじさんに話し掛けられるシーンにはやられました^^)一瞬、願いは叶ったのか!!と思いました^^)


〇(スクリーンで鑑賞)「シンシン」
(★★★☆☆)(2023年米国)(原題:Sing Sing)
無実の罪で服役している男が希望を見出した更生プログラムは舞台演劇

05シンシン

無実の罪でNYシンシン刑務所に服役しているディヴァインG、刑務所内での構成プログラムにあった「舞台演劇」グループに参加、仲間の受刑者たちと一緒に演劇に取り組むことで、なんとか生きる希望を繋いでいた、ディヴァインGは刑務所内でも恐れられる犯罪者クラレンスも演劇に誘い、クラレンスもまた演劇にのめり込む、仮出所申請の対策もクラレンスに伝授、クラレンスは仮出所することになるが、ディヴァインGの申請は却下される、絶望したディヴァインGは演劇の練習からも遠ざかっていく・・・



実話をもとにした物語、NYシンシン刑務所は厳しい管理で有名らしいですが、、、日本の刑務所のイメージとはずいぶん違うアメリカの刑務所、受刑者たちは独房に入っていますが、刑務所内での行動は比較的自由に見えます
(日本の刑務所に比べてね)、受刑者の更生のための様々なプログラムも用意されており、再犯防止に高い成果を上げているそうです、

物語はほぼ全編刑務所内で展開、びっくりするような展開はありません、それでもドキュメンタリーのようにも見える役者の演技、と思っていたら、実際にこの更生プログラムに参加していた元受刑者も俳優として出演しているとか、なるほど、妙なリアリティはそこらが源泉のようです、渋い映画です、




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2025年04月21日

先週は4本、「アマチュア」「ベテラン」「ブリジット・ジョーンズの日記3」「海の沈黙」

〇(スクリーンで鑑賞)「アマチュア」
(★★★!☆)(2025年米国)(原題:The Amateur)
妻を殺されたCIA分析官が犯人のテロリスト4人を追い詰めていく

04アマチュア

CIAで働くチャーリーとサラ夫婦、サラが出張先でテロに巻き込まれ死亡、チャーリーは復讐を誓い特殊工作員への転属を申し出るが上司は認めない、チャーリーは上司の不正の証拠を掴んでおり、それを取引材料に特殊工作員の訓練を受けることになるが、分析官のチャーリー、銃の扱いや格闘戦はからっきしダメ、爆弾造りだけは合格点を取る、上司はチャーリーが掴んでいる不正の証拠を捜索、チャーリーも事故を偽装して葬り去ろうとするが・・・・



インテリ系分析官が工作員としてテロリストを追い詰めるという“アマチュア”スパイの物語、プロの特殊工作員のようなフィジカルな活躍は出来ませんが、チャーリーなりの気迫でテロリストを追い詰めていくシリアスな物語、チャーリーの奮闘を応援したくなります、

CIAの暗部が物語の鍵になります、不正の証拠を安全弁に訓練所を脱出、独りテロリストを追い始めます、1人目のテロリストと対峙したチャーリーは非情に徹することが出来ず取り逃がすミス、一方CIAもチャーリーを裏切り者として追い始め、訓練所の最強教官が執拗に追跡してきます、教官に勝てるはずもない“アマチュア”チャーリーは絶体絶命の危機の連続、、、

と、一味違ったスパイアクション、なかなか面白かったです、


〇(スクリーンで鑑賞)「ベテラン 凶悪犯罪捜査班」
(★★★!☆)(2024年韓国)(原題:I, the Executioner)
法では裁けない悪人を処刑する連続殺人が発生、凶悪犯罪捜査犯が犯人を追う

04ベテラン

悪事を働きながら法では裁かれない悪人たちが次々と処刑される事件が発生、SNSでは犯人を“ヘチ”と呼び称賛するが、警察はベテラン刑事ソ他の凶悪犯罪捜査班5人を投入、さらに優秀な現場警察官パクも捜査に加わる、そんな中、軽い刑で出所した犯人に対する“ヘチ”の処刑を望む声が高まる、ソらは警護に失敗、警護対象はまたしても“ヘチ”によって処刑されてしまう、、、



9年ぶりのシリーズ2作目、捜査班5人チームの物語ですが、活躍するのはベテラン刑事ソと班長の2人、あとの3人は今回もあまり頼りになっていません^^)

悪を捌く“ヘチ”を称賛し民衆を煽るSNSに手を焼きますが、そこはソがしっかり対応、新任警官のパクも活躍、“ヘチ”を追い詰めますが、それは“ヘチ”が仕組んだダミー、裏をかかれた捜査班は人質2人の処刑を目前にソが最後の対決に挑みます、

韓国映画らしく最後の決闘は執拗に続きます、ここらが観どころか、“ヘチ”の正体はすぐに察しがつきますが、上手な語り口で中盤までサスペンスを維持、ラストへとなだれ込みます、観て損はなし、


(★★★!☆)(2016年英国)(原題:Bridget Jones's Baby)
シリーズ3作目、なんとブリジットが妊娠!でも、父親候補が2人・・・

04ブリジット3

ブリジッドのかつての恋人マークは結婚、浮気者のダニエルは事故で死亡、葬儀でマークと再会したブリジッドは、マークが離婚することを知るが、パッとしない生活から逃げ出して行った音楽祭イベントでIT企業社長のジャックと知り合い一夜を共にする、一方マークとも寄りを戻す気配になり、ハッピーエンドかと思いきや、ブリジッドの妊娠が発覚、果たして父親はジャックなのか?マークなのか?



11年ぶりの3作目、ブリジッドは放送局のディレクターとしてバリバリ活躍中、そして“太っちょブリジッド”からすっきりスリムなブリジッドに変身しています、もともと体重を増やしてこの役に挑んでいたレニー・ゼルウィガーが本来の姿で登場です、これだけで11年の経過が説明できちゃうという簡明な展開、

物語は妊娠が発覚してからのドタバタ劇、2人に言い出せず、2人とも自分が父親だと思い込んでしまいます、ついに真実を告白したブリジッドに2人とも父親としても役割を果たすことを宣言、母親1人と父親2人の展開が微笑ましいです、

そして、ついにブリジッドは出産、DNA検査で父親を特定することになります、果たして父親は・・・最新作が劇場公開中なので、予習で観るのも良いかと思います、


◆(自宅で鑑賞)「海の沈黙」
(★★★☆☆)(2004年日本)
著名画家の過去作品が贋作であることが判明したことから蘇る過去

04海の沈黙

展覧会の目玉は画家・田村の過去作品、が、この作品を観た田村自身が『これは私の作品ではない』と告発、主催者は右往左往、北海道小樽では全身刺青の入った女性の溺死体が上がる、田村の妻安奈は若い頃、夫の田村以上の才能を持った天才画家津山がこの事件に関わっていることを知り、小樽に向かい、数十年ぶりに津山と再会するが・・・



倉本聰脚本、本木雅弘、小泉今日子、中井貴一、石坂浩二、佐野史郎などの名優を迎えての鳴り物入り作品、
贋作騒ぎから展開する序盤は重厚な展開で観入ってしまいますが、後半はテーマが入り乱れてちょっと散漫になってしまいました、

詳細不明の天才画家、謎めいた執事(本人は番頭と名乗る)、入れ墨のエピソード、魅力的な入れ墨志願者など、それなりに魅かれるギミックが多すぎて、主題?の津山と安奈と田村の絵画を巡る因縁物語の影が薄れてしまい、観終わった後に残るのが混乱のみ、という感じ、倉本さん、珍しく欲張り過ぎましたか、

石坂浩二、中井貴一は貫禄の好演、本木雅弘と小泉今日子は活かしきれなかったかも、




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2025年04月14日

先週も5本、「おいしくて泣くとき」「ミッキー17」「ブリジット・ジョーンズの日記」「ブリジット・ジョーンズの日記2」「SWATアンダーシージ」

〇(スクリーンで鑑賞)「おいしくて泣くとき」
(★★★★☆)(2025年日本)
淡い初恋の想い出と共に、30年間行方不明の女性を探す

04おいしくて

父親と2人暮らしの心也、心也の父親は食堂で『こどもごはん』を提供している、弟を連れて『こどもごはん』を食べにくる夕花は酒に溺れる義父の顔色を見る生活、2人は学級新聞の係になり互いの心の隙間を埋め合う関係になる、ある日、夕花は義父から手荒い仕打ちを受ける、心也は思わず夕花を庇う、夕花を救い出すことを決意した心也は2人で遠くへ行くことにするが・・・



およその筋立ては分かっていながら、終盤はおおいに泣かされました^^)

物語は30年前の2人の高校生時代と、心也がカフェを営む現在を行き来しながら進みます、心也は父親の遺志を継ぎ、今も『子ども食堂』を運営しているようです、そこで出されるのが、30年前と同じ「醤油バター味うどん」、食事に困っている子供に提供され続けているメニューです、なんらかの事情で30年間行方が知れない夕花ですが、心也のカフェを襲った災難が思わぬ人を呼び寄せます、

高校生夕花役の當真あみには瑞々しい才能を感じます、俳優としてはほぼ新人のようです、
尾野真千子は流石の名演、たくさん涙を流してスッキリしてください、


〇(スクリーンで鑑賞)「ミッキー17」
(★★★!☆)(2025年米国)(原題:Mickey 17)
借金地獄から逃げるために選んだのは、何度も死んでは再生される過酷な仕事!?

04ミッキー17

ミッキーは事業に失敗、借金の取り立てから逃れるために宇宙での“夢の仕事”に応募する、無事に地球外に逃げることが出来たミッキーだが、その仕事は危険な任務に就き死ぬこと!?何度死んでも人体をコピー再生できる最新技術で生き返り、また危険な任務に就くという最悪の使い捨て無限サイクル、17番目の再生ミッキーもエイリアンに襲われて死亡、したかと思われたが・・・



倫理的理由で人体再生コピー技術は地球での運用が禁止されていますが、企業が行う地球外の植民地開発で限定的に運用可能という設定、ミッキーはただ一人の“エクスペンダブル”=使い捨て人間、エイリアンに襲われたミッキー17は命からがら?基地に戻ってきますが、そこにはミッキー18がすでにコピー再生されています、ミッキーが2人!!そこから始まるドタバタ、

再生コピーとはいえ17と18は微妙に性格が違います、臆病な17と攻撃的な18、そして基地を襲うエイリアンと迎え撃つ植民地開発企業、最後の収束へはそれぞれのイメージが逆転しながらなかなか上手に展開します、お気楽映画なので何も考えずに楽しみましょう、


(★★★★☆)(2001年米・英合作)(原題:Bridget Jones's Diary)
シリーズ1作目、30代独身のブリジッドが理想の自分に向かって邁進、ラブコメディ

04ブリジッド01

ロンドンの出版社に勤めるブリジッド、仕事・恋愛・ダイエットと忙しく動き回るが、なに一つうまく行かない毎日、一念発起日記をつけ始める、目標は「痩せる」「酒とタバコをやめる」「理想のボーイフレンドを見つける」、幼馴染の堅実で真面目なマークや、イケメン上司でプレイボーイのダニエルとの出会いがある、ブリジッドの気持ちは正反対の2人の間を行き来する・・・



前向き、でもすぐにクヨクヨする、最良のパートナーを求めているが、ちょっとした行き違いにすぐにブチ切れて別れてしまう、仲間からのアドバイスであれこれ策を弄するがヘマをしてばかり、そんなチャーミングなブリジッドの恋と仕事の物語、これでもかというくらい揺れ動くブリジッドですが、最後にはハッピーエンドが待っている・・・のか???それは観てのお楽しみ、

主演のレネー・ゼルウィガーがとにかくチャーミング、上手な俳優さんです、相当体重を増やしてブリジッド役に挑んだそうです、さすが、3作目を見ればホントの彼女が観れますよ、


(★★★☆☆)(2004年米国)(原題:Bridget Jones: The Edge of Reason)
シリーズ2作目、相変わらず2人のボーイフレンドの間で揺れ動くブリジッド

04ブリジッド02

TVレポーターに転職したブリジッド、幼馴染のマークとうまく行っている、と思っていたら美人秘書とマークの関係が気になり始める、元上司のダニエルもTVレポーターに転身、タイでの取材旅行に同行することになったブリジッド、またもやダニエルの甘い言葉に騙されそうになる、なんとか無事帰国の途に着いたかと思いきや、身に覚えのない麻薬密輸の罪で投獄されることに、、、



1作目が大ヒットしたことからの典型的な“2匹目のドジョウ”作品、今回もブリジッドが2人の間を何度も揺れ動きます、そしてタイへの出張取材、異国でのロマンスというのもよくあるお話、でも、シリーズは3作あり、最新作が近日公開、ここはぐっと堪えての鑑賞をお願いします、

主演のレネーは今作でさらに体重を増やしています、役づくりが凄い、でも3作目を観ればもっと楽しくなりますよ、

(★★!☆☆)(2017年米国)(原題:S.W.A.T.: Under Siege)
重要な証拠を握った人物を逮捕したSWATが連行した拘置所が組織に襲われる

04SWATアンダーシージ

銃撃戦の末に重要なブツが入ったコンテナを押収したSWAT、中には一人の男がいた、この男を拘置所に連行したところ、組織から男を引き渡すよう脅迫が来る、もちろん引き渡しなどしないSWAT、本部に応援を頼むが、通信や電力がすべてダウン、組織の戦闘部隊が大挙攻め入ってくる、限られた戦力で戦う事になったSWATは窮地に・・・



コンテナ押収の銃撃戦と拘置所での攻防戦、この2つのシークエンスだけのシンプルな物語、コンテナで発見された男は組織にとって致命的な情報を握っている敏腕元工作員でやっかいな存在、さらにSWATの中にも組織と繋がっている内通者がいる模様、多勢に無勢、とそれなりに工夫されてはいますが、物語としてはとってもシンプルな進行です、

休日のお気楽鑑賞なら大丈夫、




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2025年04月07日

先週も5本、「教皇選挙」「エミリアペレス」「リトルシベリア」「ジェリーの悲劇」「ゴンドラ」

〇(スクリーンで鑑賞)「教皇選挙」
(★★★★☆)(2024年米国・英国合作)(原題:Conclave)
次の教皇を選ぶ選挙コンクラーベの裏側を描くサスペンス、驚愕の結末

04教皇選挙

カソリック教会のローマ教皇が亡くなった、次の教皇を選ぶために世界中から投票権のある司祭が集められ、主任司祭のローレンスが選挙を仕切ることになる、次代教皇に意欲を示す保守派、強硬派、良心的司祭、アフリカ人司祭などが票の獲得を目指す、保守派司祭のスキャンダルのうわさが流れ、アフリカ人司祭の過去が暴かれるなど選挙は混迷、さらに亡くなった教皇が密かに司祭に任命した無名司祭が現れる・・・



教皇を選ぶ選挙・コンクラーベ、初めて聞いた時に音が日本語の『根競べ』に似ている!と思った方も多いと思います、そのコンクラーベの数日間をサスペンス仕立てで描く作品、カソリック教会のトップに立つ司祭たちが、実は俗物の集まりという強烈な皮肉がベースのサスペンス、こんな映画を作ってしまう、上映する、という文化が素晴しいです、

さて物語は、票が5人の司祭に割れたことから、当選を目指しての裏工作や駆け引き、仲間割れなどが渦巻き混迷を極めます、アフリカ人司祭が過去のスキャンダルで身を引き、保守派司祭もハラスメント疑惑で脱落、強硬派司祭が有力になった時、事件が起こります、権力闘争に明け暮れるカソリック教会に愛想をつかす司祭が現れ、事態は急変、果たして次代教皇に選ばれるのは?

そして、その選挙結果の果てにはもう一つの驚きの物語が隠されていました、なるほど、これまた如何にも21世紀の宗教映画です、必見!


〇(スクリーンで鑑賞)「エミリア ペレス」
(★★★★☆)(2024年フランス)(原題:Emilia Perez)
メキシコの麻薬王が性別適合手術をうけて人生をやり直そうとするが・・・

04エミリア

メキシコシティの弁護士リタ、本意でない事件の弁護に追われ疲れ果てている、そんなある日、誘拐され連れていかれた先は麻薬王マニタスの元、そこでリタはマニタスから驚きのリクエストを受ける、マニタスはトランスジェンダーで性別適合手術を受けて生まれ変わりたいと告白、その準備をリタに命じる、この秘密を知った以上、断れば生きて帰れない、そして多額の報酬と無制限の必要経費、リタはマニタスを生まれ変わらせることにする・・・



組織を牛耳る麻薬王が本来の気持ちに沿って女性に生まれ変わるというシチュエーションだけで相当インパクトがあるのですが、物語は生まれ変わってからがメインです、

エミリアとして生まれ変わった麻薬王は、過去に引き起こした麻薬にまつわる悲劇を目の当たりにし、慈善心に目覚めます、また妻と息子を伯母として引き取り養育しようとします、しかし・・・あまりに強い信念と愛情が徐々に歯車を狂わせていくことになります、

シリアスな物語ですが、なぜか何度もミュージカル風に歌いだすシーンがあります、最初は違和感ありますが、、、なんか慣れて来ます^^)麻薬王とミュージカル仕立て、これこそフランスのエスプリ?

観応えのある1作、想定外のラストもカタルシスがあります、なるほど!!という感じ、さて生き残るのは誰か?ぜひの鑑賞を、


◆(自宅で鑑賞)「リトル シベリア」
(★★★!☆)(2025年フィンランド)(原題:Little Siberia)
田舎町に隕石が落ちたことから巻き起こる奇妙な出来事、コメディサスペンス

04リトルシベリア

フィンランドの冬の田舎町に隕石が落下、なにもなかった町がこの隕石で色めき立つ、町興しに使おうと公民館に展示するが、隕石の権利を主張する者、土地の所有者、さらには隕石を盗もうとする男たちなどが動き出す、牧師のヨエルは隕石警護の寝ずの番を引き受けるが、ある晩不審者が侵入、そこからヨエルは殺人事件に巻き込まれてしまう・・・



何とも不思議なタッチとテンポの映画です、フィンランドのコメディセンス?なのか、監督の狙いなのか?とにかく、平凡な日常に隕石が落ちたことで起こる非日常、もしくは奇跡?みたいなことが独特テンポで進行、ついには何人もの死人が出ることになるのですが、それがあまり血なまぐさくない、ヨエルは妻との問題も抱えていたのですが、そちらの方が大きな関心事、という具合、おいおい、人が死んでるよ!と言いたくなります、

閉じられた雪の町というシチュエーションも似ているので、名作「ファーゴ」の雰囲気とちょっと似ていると思いました、乾いた感じのブラックコメディ、そんな感じの作品です、興味があれば観てみましょう、


〇(スクリーンで鑑賞)「ジェリーの悲劇」
(★★★☆☆)(2023年米国)(原題:Starring Jerry as Himself)
ジェリーに掛かって来た1本の電話から始まった巧妙な電話詐欺

04ジェリーの災難

台湾から渡米し40年以上コツコツと働いてきたジェリー、妻とは離婚、3人の息子がいる、ある日、携帯電話会社から電話が入る、不正取引の嫌疑がジェリーに掛かっているので携帯電話を止めるという、それを避けるには中国の国家警察に電話するように指示される、その番号に電話すると、刑事や上役が出て来て、ジェリーの嫌疑を晴らすために捜査に協力して欲しいと頼まれる、協力しないと逮捕されるかも・・・



原題は『Starring Jerry as Himself』、主役はジェリー本人出演、という意味、そう、この物語、電話詐欺で全財産を失ったジェリー自身の実話をジェリー自身主役で映画化したものです、映画作りに興味のあったジェリーは全財産をだまし取られた顛末を映画にして、その収入でいくらかでも回収しようと思いたったそうです、へこたれない人です、ドキュメント部分に映っているジェリーはとっても明るく見えるのが幸い、

物語はジェリーの他に家族がそのまま本人役で出演、詐欺集団などは俳優が演じています、ドキュメンタリーとフィクションが入り混じる展開ですが、物語は巧妙にジェリーにウソの不正取引事件捜査を装い、ジェリーを意のままに動かし、ついには預金財産を全部送金させてしまう、という怖いお話、

映画としての出来栄えはパッとしませんが、日本でも電話だけで数千万円を振り込ませる詐欺が横行、そんな詐欺に引っ掛からないためにも、観ておいた方が良いかも?


◆(自宅で鑑賞)「ゴンドラ」
(★★★☆☆)(1987年日本)
偶然知り合った窓拭き青年と孤独な少女が故郷を目指す

04ゴンドラ

ゴンドラに乗ってビルの窓ふきをする良、孤独な都会生活を送っている、高層マンションに母親と住む少女かがりは母親の愛情が薄く、イジメにもあっている、清掃中に窓越しにかがりを見る良、街中で偶然出会った2人、良はかがりが薄幸であることを知り、保護者の視点で愛情を注ぐようになる・・・



1987年製作作品、当時の若手クリエーターが結集して作った意欲作らしいです、知らなかったのでサブスクで鑑賞、

若手による作品らしく映画的ギミックが多数詰め込まれています、映像的、色彩的、音楽的挑戦多数、幻想シーンや心情カットも、正直簡明な映画が好きなので、こういう観念的な映画はあまり好みません、最近だと綾瀬はるか無駄遣いの「ルート29」とかも、、、

でも、リアルな物語部分もよく撮れていて、後半のロードムービーシークエンスは観どころ、ラストカットの映像も綺麗です、

たぶん、いろんな意見や提案を全部飲み込んで作ってやろう!という意気込みだったのかな?と推察します、若手の挑戦ですからね、それでよいと思いますが、リアルな物語パートだけを再編集して90分くらいにしたら、それもまた心に引っ掛かる作品になるかも、とか思いながら観ました、




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2025年03月31日

先週も5本、「悪い夏」「ネムルバカ」「侍タイムスリッパー」「エレクトリック ステイツ」「ニューオリンズ トライアル」

〇(スクリーンで鑑賞)「悪い夏」
(★★★★☆)(2025年日本)
生活保護受給者のトラブルに巻き込まれる市役所職員の行き着く先は

03悪い夏

生活福祉課で生活保護受給者の更生を促している佐々木、同僚の宮田から先輩高野が受給者女性愛美の弱みに付け込んで肉体関係を持っている、との噂を聞く、愛美の家を訪れた佐々木は事の真相を問いただすが愛美は答えない、この噂は裏社会の金本の耳にも入る、金本は高野を脅し、生活保護不正受給の仕組みに高野を引きずり込む、一方、何度も愛美の家を訪れるうちに佐々木は愛美に好意を抱くようになるが、その先には甘い罠が・・・



うだるような暑い夏、生活保護受給者の家を訪問し、再就職を促す佐々木は真面目な青年であります、一方、愛美も娘を抱えてひとりで生きていく辛さを嫌というほど味わっています、そんな弱者を利用して金儲けを企む金本やその仲間、愛美もやむなくその片棒を担いで、佐々木を美人局のターゲットにしますが、愛美にも佐々木を思う心が芽生えて来ます、

ラスト近くでの大団円、高野の不正を執拗に追及する同僚宮田の真の狙い、チンピラの山田の浅知恵、金本の圧倒的な暴力、闇におちた高野、同じく闇におちた佐々木が愛美の部屋で鉢合わせします、突発事故で事態は急展開か?と思いきや、結局高野の暴力に屈する佐々木たち、この泥沼状態を打開するのは誰か?

保身だけの役人と矛盾だらけの生活保護制度、それを食い物にする闇社会、こういうお役所物語は救われません、すべてがハッピーエンドでは終われません、が、小さな幸せが生まれることもあるかもしれません、というお話、観後感は良くないですが、上手に作られた作品です、


〇(スクリーンで鑑賞)「ネムルバカ」
(★★★!☆)(2025年日本)
2人暮らしの大学の先輩後輩、ゆる~く楽しく毎日を過ごしていたのだが・・・

03ネムルバカ

先輩のルカはインディーズバンドのボーカル、いつかデビューすることを目指している、後輩のイリスはレンタルビデオ店でバイトをしている、日々の食費にも困る生活だが、2人はいつもゆるくのんびり毎日を楽しんでいた、が、ある日ルカの元へレコード会社からメジャーデビューの話が舞い込んでくる、バンドメンバーやイリスと過ごしていた生活を捨ててルカはデビューを目指すことにするが、、、



「べいびーわるきゅーれ」シリーズの阪元監督作品、物語の大半はルカとイリスの何でもない日常生活と会話で成り立っています、これが阪元監督の真骨頂、途中からルカとイリスが「べいびーわるきゅーれ」の2人に見えてくるという錯覚に陥りました^^)とにかく何でもない事柄をネタにしてしまう才能っていうのがあるのにビックリします、

いつまでも続きそうな2人のゆる~い生活も、ルカがメジャーデビューを目指すところから大きく動きます、今までの他愛もない、なんの罪もない2人の生活は一瞬で消し飛びます、イリスも残されたバンドメンバーも生きる道筋を失います、そして、見事スターダムにのし上がったルカが手に入れたものは・・・

最初の台詞の意味がラストシーンで紐解かれます、タイトルになっている曲名の意味も紐解かれます、なるほど、映画的レトリックの見本ですね、個人的にはこういう会話劇、好きなので大いに楽しめました、


(★★★★!)(2024年日本)
とにかく面白い!幕末から現代の時代劇撮影所にタイムスリップした侍が自らの信念を貫く

03侍

※2024年10月にスクリーンで鑑賞、すでに記事も書いていますが、
 2025年3月の日本アカデミー賞で最優秀作品賞他を獲得、
 サブスクで配信中なので再鑑賞、記事も加筆・修正して再掲載します

幕末の京都、会津藩士2人と長州藩士が対峙、まさに剣を交える瞬間に落雷があり、会津藩士の新左衛門は現代の時代劇撮影所にタイムスリップする、その風体からエキストラと間違えられる新左衛門、見るものすべてが理解できず生きる希望を失いかけた時、助監督の優子に助けられ、撮影所近くの寺に住み込み、エキストラとして働くことになる、徐々に現代での生活にも慣れていく新左衛門、迫真の斬られ役演技が認められ時代劇スターの敵役に抜擢されるのだが・・・



超低予算自主制作映画、単館公開からスタートし、その面白さが話題を呼び全国公開にこぎつけた話題作、そして、ついに2025年日本アカデミー賞最優秀作品賞まで受賞しました!

いや~面白かったです、侍が時代劇撮影の現場にタイムスリップするというアイデアは、この物語のきっかけにすぎません、前半は新左衛門が21世紀の世界で戸惑う姿を描くコメディ、これはこれでお面白い、ま、そうなんだろうなと思って観ていると、中盤から新左衛門のキャラがどんどん際立っていきます、侍の魂を失わず、必死に斬られては倒れる新左衛門、自らが生きていた時代の物語を後世に残すことに生きる意味を見出していきます、そして大抜擢された大型時代劇の相手役はなんと・・・それは観てのお楽しみ、

監督の時代劇愛が新左衛門にも乗り移って、とても良い“時代劇Love”な映画に仕上がっています、東映京都撮影所も全面協力、最後の殺陣は観ていても息が詰まりました、ラストカットも洒落ています、

低予算でも良い映画が出来るという見本、必見です、自主制作映画と時代劇への応援の意味も込めてぜひ鑑賞してください、サブスクで配信中です(2025年3月現在)


(★★★!☆)(2025年米国)(原題:The Electric State)
人間とロボットとの戦争が終わった世界、人はバーチャルな世界で暮らすようになっていた

03エレクトリック

自動車事故で両親と弟を亡くしたミシェル、里親の元で暮らしている、ロボットとの戦争で勝利した人類はロボットを“制限区域”に閉じ込めていたが、ある日奇妙なロボットがミシェルの家に現れる、なんとそのロボットには死んだはずの最愛の弟クリストファーの精神が乗り移っていた、そして2人で“制限区域”の中にいるドクターを探す旅に出ることを要求してきた、ミシェルは半信半疑でそのロボットとの逃避行を始める、



近未来の話ではなく1990年頃の設定になっています、携帯電話もスマホもない世界、でもなぜかロボットだけ発達、人間の嫌がる労働を肩代わりしていたのですが、自我を持ち始めたロボットたちが反乱を起こします、劣勢だった人類ですが、「ニューロキャスター」と呼ばれる精神をコントロールしてドローン兵士を動かせる装置の発明で、人類は戦いに勝利します、この「ニューロキャスター」発明の核となっていたので天才少年クリストファーの脳だった、という設定です、

さまざまなロボットが登場しますが、これが皆とってもレトロでキュート、これまでのロボット観とは異なるアナログで優秀なロボットたちなのです、弟が組織に利用された事を知ったミシェルはロボットたちの協力を得て、人類社会を牛耳っている「ニューロキャスター」組織へ弟救出に向かうのですが、、、

先日もこういう世界観・ロボット観の映画がありましたね(「ボーダーランズ」)、近未来のシュッとしたロボットやAIではない、20世紀の姿をしたアナログロボットたちが可愛い、観ているうちに親近感が湧いてくるロボットデザインが良く出来ていると思います、

ちょっと違和感あるかもしれませんが、この映画“まずは観る”かな、


(★★★!☆)(2003年米国)(原題:Runaway Jury)
銃乱射事件の裁判、弁護士と検察側の陪審員コンサルタントの虚々実々の駆け引き

03ニューオリンズ

銃乱射事件で犠牲になった夫への損害賠償を訴え出た妻、銃を作ること自体が乱射事件の原因であると訴えた相手は銃器メーカー、良識派の弁護士ローアは切々と乱射事件の被害の大きさと銃器メーカーの責任を訴える、銃器メーカーは弁護士に加えて陪審員コンサルタントのフィッチを雇う、フィッチはすべての陪審員のプロフィールを分析、裁判に勝つための分析や裏工作、犯罪まがいのことまで平気でやる裁判のプロ、裁判は銃器メーカー有利で進むと思われたが、、、



まず、陪審員コンサルタントという職業があるのに驚きました
(米国では実際にあるそうです)、裁判を有利に運ぶために、陪審員を選ぶ段階から関与、不利になる可能性のある陪審員は拒否できる権利があるようです、陪審員を選ぶだけでひと騒動、

物語は弁護士vs陪審員コンサルタントという構図から、さらに複雑になります、陪審員の中に1人、不可解な行動をするニコラスがいるのです、彼は陪審員をコントロール、弁護・コンサル両陣営に裁判の結果を買うように働きかけます、混乱する弁護士、対立するコンサル、その判断が明暗を分ける結果となり、最後にニコラスの正体も明かされます、

弁護士をダスティン・ホフマン、コンサルをジーン・ハックマンと、両名優が法廷で激突します、ジーン・ハックマンは今年2025年2月に逝去、地味ながら本作も彼の名作の1つかなと思って鑑賞しました、




syougai1pon at 05:30|PermalinkComments(0)