アトラス

2024年06月03日

先週も5本、「ボブ・マーリー」「アメリカン アンダードッグ」「アトラス」「ミッシング」「流浪の月」

〇(スクリーンで鑑賞)「ボブ・マーリー ONE LOVE」
(★★★★☆)(2024年米国)
母国の平和を切望したレゲエミュージシャンの魂の叫び

05ボブマーリー

カリブ海の小国ジャマイカ、英国から独立したものの政治状況は混迷を極めていた、1976年、国内ではすでに大スターとなっていたボブ・マーリーは2大政党の駆け引きに巻き込まれ、銃撃を受け妻が負傷する、それでもライブに出演し続けたボブだが、ついに身の危険を感じバンドメンバーと共にロンドンへ逃れ、のちに20世紀最高と称賛されるアルバムを製作する、一方ジャマイカ国内では内戦の危機が迫っていた・・・



名前は知っていましたが、ハッキリとしたイメージが無かったボブ・マーリーの半生記です、当時ジャマイカでは2大政党が対立、公然と相手陣営に対する襲撃が行われるほどの混乱ぶり、スターだったボブは政治の道具にされることを嫌い、音楽の力で母国の平和を願います、

レゲエはボブ作ったといっても過言ではないそうです、レゲエの核心は「ラスタフェリ運動」という宗教思想=黒人のアフリカ回帰と人種差別の撤廃、こういう宗教的要素が強い音楽だったので、ジャマイカの政争にも巻き込まれていったのか?、と、今回の映画で知りました、

ロンドンでクリエイティブな活動をしたボブのバンドは、欧州ツアーなどを経て、1978年ジャマイカに帰国、ライブで対立する政党党首を結びつけ、その平和への想いを実現します、そして、病気のため36歳の若さで他界します、母国の平和とラスタに捧げた人生でした、

レゲエ、たしかに1980年頃に日本でもブームになりました、この頃ボブ・マーリーも聞いていると思うのですが、、、ワタシはというと「ラムコーク」と「トロピカルドリンク」を覚えただけの日本の呑気な若者、トホホ…ちなみに、日本にレゲエを始めて持ち込んだ曲(泉谷しげる:君の便りは南風:1973年)をアレンジしたのは加藤和彦さん、ここにも天才がいました、

ボブ役がとっても素晴らしい歌唱と肉体を披露、とくにデビューを決めたオーディション演奏のシーンがとても楽しい🎵最高、

レゲエファン・音楽ファンでなくても観て損は無し、


(★★★★☆)(2021年米国)(原題:American Underdog)
スーパーの店員からスーパーボウルのMVPに登り詰めた男の実話

05アメリカンアンダー

マイナー大学のアメリカンフットボールチーム、QB(クオータバック)のカートは独自のプレイスタイルで自分の能力を信じプロフットボウル選手を目指している、が卒業年度のドラフトで指名は無し、ブレンダと知り合い、障害のある彼女の息子とも優しく接するカート、やっとプロチームから声が掛かるがわずか2日で解雇され、スーパーマーケットで荷出し係をしながらチャンスを待つがすでに27歳、もうプロ入りのチャンスは潰えたと思えたが…



実在の伝説のQB:カート・ワーナーの半生記、ですがスポーツ一辺倒の映画ではありません、家族映画という趣も強い秀作です、

カートは、気は優しいが力持ち、視覚障害のあるブレンダの息子を愛しみながら、NFLをあきらめて興行要素の強いアリーナフットボウルの世界に身を投じます、このアリーナフットボウルというのも初めて知りました、サッカーで言うとフットサルのような狭いピッチで行われるアメリカンフットボウルをベースにした競技です、ここでの活躍がスカウトの目に留まり、ラムズに入団、そこで才能を開花させ、シーズンMVP、スーパーボウルMVPを獲得する名QBに上り詰めます、

画に描いたようなアメリカンドリーム物語、でも、カートの人柄がより物語を厚みのある仕上がりにしています、ラストの試合シーンは実際の試合映像と映画映像のミキシングが成功、記録映像のカートやブレンダ、ヘッドコーチなどと映画の俳優たちがそっくりなのにも驚きました、

拾い物の1作、自宅でゆっくり鑑賞してください、

“Under dog”は、試合などで『勝ち目のない人』、というような意味、



◆(自宅で鑑賞)「アトラス」
(★★★!☆)(2024年米国)(原題:Atlas)
近未来、反乱を起こしたAIと向き合うことになる開発者が向き合う因縁とは

05アトラス

人間とAIが共存する近未来、突然AIのハーランが人類を攻撃し始める、なんとかハーランを宇宙の果ての追いやるが、ハーランの反撃を恐れた人類は討伐部隊を送り込もうとする、ハーラン開発者の娘アトラスは、部隊長にハーランの狡猾さを示唆、それを自信満々で一蹴する部隊長、結局アトラスは自身も討伐部隊に同行することにするが…



分かりやすい人類vs AI物語です、辺境の星で戦うのは“ガンダム”風のモビルスーツ、部隊は“エイリアン2”の宇宙海兵隊風、この部隊、あっという間にハーランの歯牙に掛かってしまうのも“エイリアン2”同様、唯一生き延びた科学者アトラスは“エイリアン”のリプリー役、ある因縁からアトラスはAIと同期する恐ろしさを知っていますが、戦うにはモビルスーツAIのスミスと同期しなければならないという、皮肉なシチュエーション、この人間アトラスとAIスミスとのやり取りと、その結末が物語の心棒です、

とっても分かりやすい物語なので休日のお気楽鑑賞にピッタリです、安心して鑑賞してください、



〇(スクリーンで鑑賞)「ミッシング」
(★★★☆☆)(2024年日本)
ある日、幼い娘が行方不明になった夫婦の苦悩と、世間やマスコミ・ネットの無垢な暴力

05ミッシング

娘の美羽が行方不明になった豊と佐緒里夫婦、ボランティアの助けを借りて駅前でチラシを配り、TV局の取材を受けて情報提供を呼び掛けている、TV局のディレクター砂田はなんとか力になりたいと願っているが、上司から次々と命ぜられる強硬な取材をせざるを得ない、美羽と最後に一緒にいた佐緒里の弟圭吾も取材をきっかけに犯人の可能性を疑われる、マスコミやネット、近隣の目に翻弄される豊と佐緒里、はたして美羽は帰ってくるのか?



近年、国内の子供の行方不明者は年間1100人以上に上るそうです、これは驚き、そんな状態を物語にする意味はあると思いますが…

物語は豊・佐緒里夫婦の苦悩の日々を描き続けます、何度も押し寄せる希望と絶望の荒波、TV局の砂田は丁寧に取材を続けようとしますが、上司は目先の視聴率を稼げるスキャンダルを求めます、弟の圭吾は犯人扱いされ職を失います、警察も動いてはいますが成果は上がらない、と、延々と見せられる息苦しい物語、しかし、その間に少しの喜びや人の優しさも垣間見ることが出来ます、

といった映画なのですが…正直、映画としては希望の光がありません、観後感があまりにも悪いです、これだけの苦痛を濃密に描くなら、これだけ理不尽な社会を描き、マスコミやネットを皮肉たっぷりに批判するなら、それに見合った希望や喜びを提供するのが映画の役割だと思います、脚本か?監督か?製作か?誰の責にせよ、すべてを放り投げただけの結末を良しとは思えません、他の結末もあったはず、予定調和でも結構、娯楽映画としての役割を認識して欲しかったです、

石原さとみ、熱演の姿勢には好感、が、最も感極まるはずのシーンで涙が溢れ出ないのは惜しい、

めずらしく厳しい批評になってしまいましたね、



◆(自宅で鑑賞)「流浪の月」
(★★★!☆)(2022年日本)
幼い頃の事件体験が15年後にふたたび二人を引き合わせてしまう悲劇

05流浪の月

幼い頃に事件に巻き込まれた経験がある更紗、ある日、同僚と行ったカフェでその事件の当事者の男、文(ふみ)と出会う、恋人亮に暴行された更紗は文のもとへ逃げ込む、実は15年前、文は更紗を誘拐した犯人として逮捕されていた、しかし、その事件の真相は別にあり、文と更紗は心の絆で結ばれていたのだが…



「ミッシング」同様、救いようのない物語、更紗を誘拐した罪で少年刑務所へ送られた文、これは冤罪でした、マスコミや社会は文をステレオタイプの異常者として社会から抹殺、そして15年後、更紗と文の再開は新たな事件としてマスコミが情報を垂れ流し、警察はまたもや文を逮捕します、事の真相を語れない更紗、そして文にも逃れることが出来ない宿命があるのです、

スクリーンでも鑑賞済、出来栄えは実に良い映画です、広瀬すずも体当たりの演技、高評価も頷けますが、更紗の運命と文の宿命が重すぎて、2人のピュアな心持ちさえ汚されていく感じがどうしても支持できません…残念、

なぜ、この2本を続けて観てしまったのか?分からない…




syougai1pon at 05:30|PermalinkComments(0)