トナカイは殺されて
2024年06月10日
先週も5本、「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」「関心領域」「マイ ブロークン マリコ」「トナカイは殺されて」「あちらにいる鬼」
〇(スクリーンで鑑賞)「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」
(★★★★☆)(2024年日本)
希代の天才、日本の音楽シーンを切り拓いた加藤和彦の真実と彼へのレクイエム
1967年、突如発表された「帰って来たヨッパライ」はそれまでの日本音楽界の常識を覆す、レコード会社や作曲家・作詞家が関わっていない、歌い手が自ら作ったこの1曲は大ヒット、そこから加藤和彦の才能は全開!「イムジン河」「悲しくてやりきれない」、サディスティックミカバンド結成、「結婚しようよ」「春夏秋冬」のプロデュース、安井かずみとの結婚、レゲエ・ラテン・タンゴ、舞台音楽と、常に音楽シーンを切り拓いてきた加藤和彦の素顔に迫るドキュメンタリー、
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加藤和彦を知る世代には堪らなく素敵なドキュメンタリーに仕上がっています、必見!
加藤和彦を知る世代には堪らなく素敵なドキュメンタリーに仕上がっています、必見!
とにかく加藤さんの多彩な才能に驚かされます、彼に関わったミュージシャンたちが全員脱帽するその才能とセンスとこだわり、坂本龍一、高橋幸宏、高中正義、つのだひろ、松任谷正隆、蒼々たるミュージシャンから発せられる一言一言が驚きの連続です、
盟友であるきたやまおさむと松山猛のコメントはやはり加藤さんの本質を良く捉えていた感じ、常に新しいものを追求して変遷、レッテルでは語れない存在であり続けた加藤さんの神髄をじんわり感じさせていただきました、
彼の自死に関しては、さすがに皆、歯切れが悪い、もっといろんな世界が待ち受けていたであろうに、という責念の想いがあります、
個人的には、生まれが加藤さんの実家と近く、はしだのりひこさんの家とも近かった、はしださんはよくお見掛けしましたが、加藤さんとは会ったことありません、2002年のフォークル再結成をきっかけに、加藤さんの楽曲メインのフォークバンドを結成、17年間活動、そんな個人的な思い入れもあり、エンディングでは泣いてしまいました、
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〇(スクリーンで鑑賞)「関心領域」
(★★★★☆)(2023年米国・英国・ポーランド合作)(原題:The Zone of Interest)
アウシュビッツ収容所の隣に暮らしていたドイツ軍人家族風景を通して描く悲劇
第2次世界大戦最中、ポーランドのアウシュビッツ収容所長のルドルフ一家、妻と3人の子どもたちと共に収容所の隣の庭付き邸宅で暮らしている、何の心配もない平穏な日々、妻はガーデニングを楽しみ、子どもたちは庭のプールではしゃいでいる、ルドルフは収容所内での任務を効率的に遂行することに何の疑念もない、ルドルフは昇進し転属となるが、妻はなんの不満もない今の生活を手放したくない、この最上の生活が・・・
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もちろん、収容所内ではユダヤ人の大量虐殺が日々行われていた訳ですが、塀一枚隔てたルドルフの家族には無縁の事柄、収容所から持ち帰った毛皮のコートを着て姿見で確認する妻の姿が恐ろしいです、
もちろん、収容所内ではユダヤ人の大量虐殺が日々行われていた訳ですが、塀一枚隔てたルドルフの家族には無縁の事柄、収容所から持ち帰った毛皮のコートを着て姿見で確認する妻の姿が恐ろしいです、
劇中では収容所内の情景は一切描かれません、あくまで平穏で幸せなルドルフ一家の生活を描くだけ、しかし、収容所からは罵声や悲鳴が聞こえ、塀越しに見える煙突からは煙が立ち上り、夜には炎が明々と燃え上がります、越して来た妻の母親はそれに耐えきれず姿を消してしまいますが、妻はその理由が理解できない、この生活がどんな犠牲の上に成り立っているのか?気付いていないのです、
現在のアウシュビッツ収容所の姿も少し映し出されます、そこには恐ろしい戦争犯罪の記憶が刻み込まれていました、怖いシーンがない恐怖映画、映画というツールをよく理解して作られた秀作です、2023年カンヌ映画祭グランプリ、ぜひ鑑賞してください、
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◆(自宅で鑑賞)「マイ ブロークン マリコ」
(★★★!☆)(2022年日本)
親友を失った喪失感と後悔の念からほとばしる疾走感、永野芽郁熱演
シイノはTVニュースで親友のマリコが自殺したことを知る、幼い頃からの親友でなにもかも共有していると思っていた親友の死を受け入れられないシイノ、しかしマリコの劣悪な家庭環境と卑劣な父親の所業を知っているシイノは激情に任せてマリコの遺骨を強奪!遺骨を抱いてマリコとの思いでの海を目指し旅に出る・・・
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公開時にスクリーンで鑑賞、サブスクでの配信が始まりました、
公開時にスクリーンで鑑賞、サブスクでの配信が始まりました、
物語は親友の死で始まります、絶望的な喪失感と親友ならもっと出来ることがあったのかもという誰もが思う後悔の念、しかし、シイノはマリコの置かれていた劣悪な環境を知っています、マリコを救うのは今からでも遅くない、物語は一気に転がり始めます、そこから始まる疾走感が凄い、そして、遺骨との旅が徐々にズルズルになって行くのも面白い、最後の着地点の事件がもうちょっと丁寧に撮れば最高だったのになあ、惜しい!!
永野芽郁が熱演、この人は俳優だね~、エエ目つきしていまわ、ベランダからの跳躍シーンも上手に撮れました、それと食事シーンが印象に残ります、永野芽郁が食べまくる爽快感、ワタシは好きなんですけどね、食事シーン、人がガッツり食べるシーンに執着するのはアジアの文化かな?洋画では滅多に観ませんもんね、
観て損は無し!サブスクで公開中です、
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◆(自宅で鑑賞)「トナカイは殺されて」
◆(自宅で鑑賞)「トナカイは殺されて」
(★★★☆☆)(2024年スウェーデン)(原題:Stolen)
先住民族が遊牧するトナカイが密猟される事件が頻発、少女が犯人と対峙する
スウェーデンの先住民族サーミ人はトナカイを遊牧して生計を立てている、サーミ族を快く思わない白人によるトナカイ密猟が後を絶たない、サーミ人のエルサは自分のトナカイも殺されてしまい、警察に真相解明を迫るが、警察も捜査に本腰が入らない、止まない密猟に業を煮やしたエルサは犯人の小屋に忍び込み証拠を掴もうとするが・・・
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白銀の世界で巻き起こる事件、何処の国でも先住民族や少数民族に対する偏見や横暴が起こりうるようです、犯人たちはサーミ人に対する偏見で凝り固まっています、雪の閉ざされた世界での偏見と差別による事件、もうどうやっても映画的サスペンスが生まれてくるシチュエーションです、
白銀の世界で巻き起こる事件、何処の国でも先住民族や少数民族に対する偏見や横暴が起こりうるようです、犯人たちはサーミ人に対する偏見で凝り固まっています、雪の閉ざされた世界での偏見と差別による事件、もうどうやっても映画的サスペンスが生まれてくるシチュエーションです、
スノーモビルで走るシーンを観ると、同様の銀世界での事件を描いた「ウインド リバー」を思い出します、ラスト前の決闘シーンが壮絶な名作、今作はそこまでのアクションはありません、犯人との決着も思わぬ形でつきます、それでも寒く雪に閉ざされた世界での事件には独特のサスペンスがあります、好きなテイストの物語、
ちなみにサーミ人、前はラップ人と呼ばれていたそう(聞いたことあります)ですが、この表現は古い蔑称だそうで、現在はサーミ人と呼ばれています、
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◆(自宅で鑑賞)「あちらにいる鬼」
(★★★!☆)(2022年日本)
流行作家同士の奔放な男女関係と、それを見守る妻
進歩的な恋愛観を持つ作家 長内みはるは、講演会で知り合った作家 白木と恋におちる、白木は多くの女性との関係を持ちながら、妻笙子と子どもとの家庭にも目を配る、みはるも他の男との関係を持ちながらも、白木との関係を断ち切れない、2人の関係は男女の仲以上の結び付きに発展、妻笙子もそれを見守るという奇妙な関係が続くが、ある日、笙子は突然出家する決意をする・・・
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瀬戸内寂聴と井上光晴、その妻をモデルにした私小説の映画化、2人の濃密な男女関係や奔放な行動がしっかり描かれています、みはるが主人公かと思って観ていたら、どうも一番存在感を示すのは妻笙子でした、夫の不貞行為の後始末を粛々と行う笙子、決して弱い妻ではなく強い意志を感じる妻笙子を広末涼子が好演、物語後半で彼女が一段と際立ちました、
瀬戸内寂聴と井上光晴、その妻をモデルにした私小説の映画化、2人の濃密な男女関係や奔放な行動がしっかり描かれています、みはるが主人公かと思って観ていたら、どうも一番存在感を示すのは妻笙子でした、夫の不貞行為の後始末を粛々と行う笙子、決して弱い妻ではなく強い意志を感じる妻笙子を広末涼子が好演、物語後半で彼女が一段と際立ちました、
瀬戸内寂聴さんの波乱万丈の人生と実際に出家したのは周知、劇中では寺島しのぶが体当たりの演技で髪を落とし女優魂を発揮しました、
タイトルの「あちらにいる鬼」とは?先に亡くなった井上のことなのか?それとも、すでに鬼籍に入った寂聴の事なのでしょうか?とにかく凄い人生だったようです、
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syougai1pon at 05:30|Permalink│Comments(0)