ノーアザーランド

2025年03月24日

先週は秀作ばかり5本、「Flow」「ノーアザーランド」「私にふさわしいホテル」「ビーキーパー」「密輸1970」

〇(スクリーンで鑑賞)「Flow」
(★★★★!)(2024年ラトビア・フランス・ベルギー合作)(原題:Straume)
ラトビア発、台詞一言もなし!ハラハラドキドキの猫と動物たちの冒険アニメ

03Flow

森で暮らす黒猫、突然圧倒的な洪水が襲って来る、逃げ惑う動物たち、流れ着いた1艘のボートに黒猫が乗り込むと、そこにはカピバラの先客が、さらに犬、ワオキツネザル、そして不思議な力を持つ白くて大きな鳥が乗り込んでくる、彼らは果てしない水の世界を漂っていく・・・



参りました!!一言も台詞ないし、人間は出て来ないし、動物はほぼ野生のままだし、それなのに、ハラハラドキドキ、映画的サスペンスに満ち溢れた極上のアニメーションでした、ラトビア人監督が作り上げたワンダーワールドです、今年度アカデミー長編アニメーション映画賞受賞作品です、

どこの世界なのか分かりません、人間は滅んだようです、なぜ洪水が起こったのかも分かりませんが、その水量は圧倒的で世界はどんどん水の底に沈んでいきます、黒猫がねぐらにしていた人間の家も水没、ボートに乗り込めたのは幸運でしたが、そこから何度も苦難が押し寄せます、危機が迫っても黒猫はタダの猫、ミャウミャウと泣き叫ぶばかり、切なくてドキドキが止まりませんでした、アニメーションでこんなに胸が締め付けられたのは初めてです、

物語の後半、動物たちは少しずつキャラクターを持ち始めます、それなりに互いを理解し、知恵も発揮して困難を乗り越えます、5匹の動物には意図的な比喩や暗喩がたくさん含まれていると思いますが、それを考えなくても大丈夫な出来栄え、シンプルに楽しめる物語です、

原題「Straume」は嵐の事かな、邦題の「Flow」=漂う、もエエ感じです、
ぜひの鑑賞をオススメします、


(★★★★☆)(2024年ノルウェー・パレスチナ合作)
パレスチナ人居住区を侵略していくイスラエルの実態を映し撮ったドキュメンタリー

03ノーアザーランド

ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住区、イスラエル最高裁が住民たちの住居の取り壊しを認めたため、次々と家が取り壊されていく、ここで生まれたバーセルはカメラを持ち、イスラエルの暴挙を克明に映す、イスラエル人ジャーナリストのユバルもこの暴挙の実態を世界に発信しようとバーセルに協力する、敵対する国の2人が友情を深めながら、着々と進むパレスチナ人迫害を映し出すドキュメンタリー、



今年度アカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞作品です、

今も現実に戦争を行っているイスラエルとパレスチナ、今作は2020年頃からの4年間、パレスチナ人排斥のために、意図的に制定された法律にのっとって軍事演習場を作るという名目で、生まれ故郷を破壊していくイスラエル軍やイスラエル人入植者をカメラがとらえています、

撮影がとても上手で(カメラマンが2人いるようです)、まるで映画のワンシーンを観ているように感じるショットもあります、が、取り壊し現場での映像は身震いするような冷徹な現実、結局、人は学ばず同じことを繰り返す生き物、互いに殺し合う事しかできないのか・・・というような悲しい思いしか湧いてきません、

それでも現実のかけらを少しでも観ていく事の大切さに変わりはない、そう信じての鑑賞を推奨します、


◆(自宅で鑑賞)「ビーキーパー」
(★★★!☆)(2024年米国・英国合作)(原題:The Beekeeper)
引退した諜報員が正義を貫くために、ひとりで大暴れ

03ビーキーパー

ミツバチ養蜂家のアダム、大家の納屋のスズメバチの巣を駆除し、お礼に夕食をごちそうになる約束だったが、その夜、大家の女性は自殺、発見者のアダムは逮捕されるがすぐに自殺と判明、大家の娘ヴェローナはFBI捜査官、母親の自殺の原因を探ろうとするが、アダムはあっという間に自殺の原因となった詐欺集団を突き止め、復讐を図る、アダムは引退した最強秘密工作員だったのだ・・・



ジェイソン・ステイサムの当たり役、引退した無敵の工作員、あっという間に詐欺集団の本社ビルに乗り込みビルを破壊してしまいます、死者も数名出ますが、そんなことはお構いなし、唯一アダムに優しかった大家の女性、年寄りから金を巻き上げる詐欺集団には容赦がありません、

と、物語は最初の30分で解決かと思いきや、詐欺集団の親玉デレクがアダム抹殺に躍起になります、顧問を務める政府機関OBはアダムの怖さを知っていますが、やむなく参戦、しかし刺客は次々とアダムの返り討ちにあいます、デレクは追い詰められ、最後に母親を頼ることにします、その母親とはなんと米国の最高権力者・・・

105分のノンストップアクション、絶体絶命でも死なないアダム、ハラハラ無し、安心して観ていられます、絶対に死ぬわけがないから^^)休日のお気楽鑑賞にはピッタリです、


(★★★!☆)(2024年日本)
売れない作家が這い上がろうと、なりふり構わずあの手この手で暴れまくるコメディ

03私にふさわしい

新人賞を受賞した加代子だが、その小説を文壇トップの東十条に酷評されたことから鳴かず飛ばずの小説家生活、山の上ホテルに泊まって小説家を気取っていると、真上の階の部屋で東十条がカンヅメで原稿を書いていることを知る、東十条が原稿を落とせば、自分に出番が回ってくると、加代子はメイドに変装してシャンパンを差し入れ、書きかけの原稿にシャンパンをこぼしたり、身の上話を長々と話したりと、朝まで東十条を振り回す、結局、東十条は原稿を落とし、開いた穴に加代子の短編を差し込むことに成功する、が東十条はこの策略に気付き、2人の長いバトルが始まることになる、



加代子はその後、編集者のアイデアで別ペンネームで小説を発表、これが賞を受賞します、そして最高文学賞の最終選考に残ると、別人になりすまし審査委員長である東十条の家族に取り入るという徹底したブラック作家ぶりを披露、編集者も良い作品さえできれば良いという無節操対応で2人を煽ります、ところが・・・東十条にも変化が、加代子への怒りが逆に創作意欲を沸き立たせるという思わぬ副作用があり、、、

と、文壇を皮肉りながらの洒落たドタバタコメディ、堤幸彦監督、主演のんは嵌り役の怪演、なかなか面白い1作です、ちなみに登場するのは実在の山の上ホテル(東京お茶の水)です、蒼々たる文壇メンバーが実際に利用していたそうです、今度、お茶でも飲みに行くかな^^)


◆(自宅で鑑賞)「密輸1970」
(★★★!☆)(2023年韓国)(原題:Smugglers)
公害でアワビ漁が不良になった海女たちに持ち掛けられたのは密輸の儲け話

03密輸1970

1970年頃の韓国の漁村、近くに出来た工場からの排水の影響で海女のジンスクたちのアワビ漁は不作に、そこに持ち掛けられたのが密輸の手伝い、海に投棄された密輸品を引き上げる仕事だ、生活のために悪事に手を染めた海女たちだったが、密告により一人を除き全員が逮捕され、投獄される、数年後、出所した海女たちは平穏に暮らしていたが、1人逮捕を逃れた海女チュンジャがソウルから戻ってくる、大きな密輸の仕事を持って・・・



後半の物語が本題です、チュンジャがソウルの密輸ビジネスで派手に荒稼ぎしたのが発端、腹を立てた密輸を仕切る元軍人クゥオンに脅されたチュンジャは、海女たちを使った密輸方法と引き換えに命からがら故郷に戻ってきます、そこで海女たち、チュンジャ、クゥオン、密輸を仕切る地元の暴力団、税関当局の役人などの思惑が入り乱れ事態は複雑化、ついに大きな密輸作戦が実行されます、が、そこには裏のウラをかく策略が・・・

この頃の韓国は朝鮮戦争~ベトナム戦争派兵で疲弊しており、庶民は貧しい生活を余儀なくされていた時代、日本の電化製品やファッションなどが盛んに海上密輸されていたようです、ちなみに日本と韓国の正常化条約が締結され、国交が回復されたのは1965年(昭和40年)、2025年で国交回復60年となりました、互いに仲良くやりましょう、ね、




syougai1pon at 05:30|PermalinkComments(0)