落下の解剖学

2024年03月04日

先週は5本、「落下の解剖学」「山の郵便配達」「ザ クリエイター」「夜が明けるまで」「とらわれて夏」

〇(スクリーンで鑑賞)「落下の解剖学」
(★★★★☆)(2023年フランス)(原題:Anatomie d'une chute)
雪山の1軒屋で夫が転落死、妻に疑惑が掛かる、目撃者は視覚障害のある男の子

03落下の解剖学

人気作家のサンドラ、夫と視覚障害のある息子ダニエルと3人で暮らしている、ある日、ダニエルが散歩から戻ると、父親が家の前で血を流して倒れている、悲鳴を聞いたサンドラも家から飛び出し夫の容態を確認するが、すでに事切れていた、事故か自殺か他殺か?夫は死ぬ前に打撲傷を受けており、さらにサンドラと夫が前日に言い争いをしていたことが判明、サンドラは殺人罪で起訴される、果たして真実は何処にあるのか?



冒頭から速いテンポで事件発生、素早い展開で起訴、裁判が始まってからは検事と弁護士の丁々発止のせめぎ合い、ここからが長いです、全編152分、個人的にはもう少し短くしてほしかったけど、退屈はしません、判決の行方もさることながら、最後まで分からない真相、どんでん返しがあるのではないかとハラハラさせられます、

フランスの裁判、日本とはずいぶん趣が違います、陪審員あり、証拠並べはあるのですが、主に陪審員の心証を獲得するための弁論・ディベートがメインな印象、被告は毎日家に帰り(これは異例のようですが)、子供とも普通に接触できる(最後だけは隔離されましたが)という自由さ加減、

日本の被告に対する扱いは、世界に類を見ない厳しさ、拘置所に何か月も留置する捜査手法はぜひ見直すべきだと思います、冤罪の温床、

視覚障害の息子が連れている盲導犬が重要な役割を担います、こちらもハラハラしましたが無事です、はい、ヨカッタ^^)

原題の直訳は「秋の解剖学」??事件は冬?夫婦の季節の事か?不明、



◆(自宅で鑑賞)「山の郵便配達」
(★★★★☆)(1999年中国)(原題:那山 那人 那狗)
山深い村々に郵便物を届け続ける父と息子の愛情物語

03山の郵便配達

中国湖南省、父親は長年、山間部の村々に数日間掛けて郵便を届ける仕事をしていたが引退を決意、息子がその仕事を継いでくれることになったのは望外の喜び、息子が一人で初配達の旅に出かける日の朝、配達の相棒である案内犬“次男坊”が息子に着いていこうとしない、困った父親は息子と2人で最後の郵便配達の旅に出ることにする、



いくつかの村を巡る2泊3日の郵便配達の旅、そんなに急峻な山を登るわけではなく、その風景はどこか日本の里山とも似ているように感じます、父親はぶっきらぼうに配達の要領や、村人の境遇、付き合い方を息子に伝授していきます、そしてなにより、人々にとって大切な郵便物を運ぶ仕事の大切さと尊さを伝えます、そして、それに応える息子、

次の配達に息子が一人で出発します、そして、犬の“次男坊”もその後を追います、目を細めてみる見送る父親、、、とても誠実な物語、事件は起こりません、必見です、



(★★★!☆)(2023年米国)(原題:The Creator)
人類とAIが対立する未来、AIが作り出した最終兵器とは?

03クリエイター

2075年、進化したAIがロスアンゼルスで核爆発を起こす、米国ではAIを敵とみなし闘いに突入、一方、ニューアジアでは人類とAIが共存する社会を目指していた、そんな中、AIが究極の最終兵器を開発したとの情報をもとに、ニューアジアの拠点を米軍が急襲、潜入捜査をしていたジョシュア軍曹は辛くも助かるが妻は死亡、最終兵器の在り処を突き止めた米軍はジョシュアに兵器の処分を命じる、



最近は2部作、3部作とシリーズ化する傾向がありますが、本作は外連味なくスピーディーな展開、たぶん2作分くらいの濃い内容がギュッと詰まった面白い物語に仕上がっています、期待値以上の出来栄え、

AIの敵対化は「ターミネーター」以来の頻出テーマですが、そこもまた一捻り、二捻りあり最後まで楽しめます、最終兵器も子供の姿をしているというのもまずまず成功、

架空の国“ニューアジア”の地図が映し出されますが、中国大陸や東南アジア、そして日本もこの国に含まれているようです、劇中で日本語文字や東京らしき風景も出て来ます、なんとなく悪者扱いかと思いきや、どちらかというと平和を愛する国と民という描き方、多様性を意識した民主党的映画です、トランプはこんな映画を認めないだろうな^^)



◆(自宅で鑑賞)「夜が明けるまで」
(★★★☆☆)(2017年米国)(原題:Our Souls at Night)
老いた男女のラブロマンス、そして人生の仕舞い方探し

02夜が明けるまで

妻と死に別れ一人暮らしのルイス、妻の死をうまく受け入れられていない、そこに近所に住む女性アディが訪ねてくる、アディはルイスにある提案をする、それは『2人でベッドで朝まで過ごしたい』というものだった、それはセックスを伴わない行為だという、困惑するルイス、だがアディの提案を受け入れて、夜を共に過ごすことにする、、、



往年の名優、ロバート・レッドフォードとジェーン・ホンダの共演、懐かしさと居心地の悪さが相まって妙な気分で鑑賞、でも観後感は良かった、ほッ、

アディも夫と死別、朝まで一人ベッドで過ごすことが苦痛、そこで近所のルイスに奇妙な提案を持ち掛けた、もちろん好意も持ってはいるが、セックスは無し、最初は会話も弾まない、そりゃそうだ^^)でも、徐々にお互いの心の底の本音をさらすことで2人は親密な関係になっていきます、隠れるように付き合っていた2人が堂々と腕を組んで街を歩くシーンは楽しそう、

ルイスには娘、アディには息子と孫がいる、彼らとの関係もぎくしゃく、それでも心を開くことで人生の着地点が見えてきます、地味ですが良心的な映画、



◆(自宅で鑑賞)「とらわれて夏」
(★★★!☆)(2013年米国)(原題:Labor Day)
偶然街で知り合った脱獄犯が母と少年がいる家に入り込む、が、愛情物語です

03とらわれて夏

米国東部の小さな街、母アデルは13歳の息子ヘンリーと2人暮らし、ある日スーパーの駐車場でフランクが強引に車に乗り込んで来る、フランクは傷を負った脱獄犯で、危害は加えないから1日だけ家にかくまってくれと迫る、恐怖におののきながらアデルは家にフランクを入れる、ここから3人の奇妙な数日間が始まる・・・



脱獄犯との共同生活モノ、というジャンルがあるのかどうか知りませんが、そういうスタイルを取りながら、実際は13歳の少年の視点で見た、世の中や大人の不条理、男と女の性を描いた愛情物語です、

妻殺しの罪で服役していたフランクですが、それには事情アリ、フランクは紳士的にアデルに接し、息子ヘンリーには父親的影響を与えます、1日で出ていく約束を違えもう1日もう1日と過ぎる日を3人はそれなりに楽しみます、フランクとアデルは男女の関係になり、それを察知するヘンリーもまたフランクを慕っています、

犯人に好意を抱く“ストックホルム症候群”を超えて、3人は結ばれ、逃避行に出ようとしますが・・・

観後感が良いです、原作は女流作家の小説のようです、如何にもな感じ、原題は米国の休日「労働者の日」の事、9月の第1月曜日、





syougai1pon at 05:30|PermalinkComments(0)